活線作業で感電死した被害者に責任を問う最高裁 2023年3月19日 韓国の労災・安全衛生

写真は記事とは無関係。/資料写真チョン・ギフン記者

労働者が保護装備なしで電柱に昇って感電死したことに関して裁判に付された現場所長の産業安全保健法の違反疑惑に対して、無罪が確定した。業務上過失致死だけが一部認められ、懲役刑の執行猶予が宣告された。裁判所は、地上作業者が電気が流れている電柱に保護具を着用せずに昇る理由はなかったとし、被害者にも過失があるとした。被害者に責任を転嫁し、使用者に『免罪符』を与えたと批判されている。

「活線状態」を知らずに低圧線を解体、危険にも拘わらず現場所長は「昼食」

<毎日労働ニュース>の取材によると、最高裁三部は、産業安全保健法違反と業務上過失致死の疑いで裁判に付された全羅北道の建設会社B社の現場所長A氏に、懲役10月・執行猶予2年を宣告した原審を確定した。

事故は2020年8月24日に発生した。B社所属の労働者たちは、電柱の電線交替と移設作業を行っていた。現場所長のA氏は当日の午後2時頃、電柱を撤去していたC氏に、今やっている作業を止めて、別の電柱で作業していた職員を助けるよう指示した。

C氏が席を移っても電信柱の低圧線は「活線」状態で床に置かれていた。そのことを 知らなかった補助作業者のDさん(死亡当時52歳)は、高さ7~9mで低圧線を撤去していて感電して亡くなった。当時、Dさんは絶縁手袋を着けていなかったことが判った。A氏は感電の危険性を知らせずに、昼食のために席を離れたことも判った。

検察は、A氏が作業者に未絶縁状態の電柱の充電部に接近制限などの措置をしないなど、安全措置義務に違反したとして起訴した。また、事前に感電の危険を警告する『監視員』を配置しなかったと判断した。

A氏側は「Dさんが感電死したという証拠が足りない」と、容疑自体を否認した。同時に、△絶縁用保護具の支給義務、△接近制限措置義務、△監視員配置義務には違反していなかったと抗弁した。補助作業者であるDさんに、活線作業車なしで電柱に上がるようにした事実はないとした。

罰金200万ウォン→懲役10ヵ月、執行猶予2年、「被害者に相当の過失」

一審は電線遮断など、事業主が定期監督をしなかった部分だけを有罪と判断し、A氏に罰金200万ウォンを宣告した。作業者死亡による産業安全保健法違反と業務上過失致死容疑は、全て無罪とされた。Dさんが7~9メートルの高さにある充電部に近付くことまで予想し、フェンスを設置したり、監視員を配置する義務はなかったと判断した。

裁判所は「被害者が感電した場所は、手ぶら昇るには難しい高い場所である上に、活線車輌が3台いて、柱上の作業者が3人いる状況だった。」「被告人が被害者に安全装備なしで7~9メートルの高さまで上がって作業するよう指示する必要があったのか、疑問」と判示した。保護具なしで作業する場合、感電の危険があるということが簡単に予想できたにも拘わらず、Dさんが自由意志で電柱に昇ったと解釈される。

控訴審は業務上過失致死の部分を有罪と認め、懲役10月に執行猶予2年を宣告した。裁判所は「被告人が活線状態にあるという危険性を地上の作業者に事前に知らせ、低圧線を整理する作業をしないよう指示したり警告していたとすれば、被害者が電柱に昇らなかったり、少なくとも絶縁用の保護具を着用して電線に触っただろう」と指摘した。

『産業安全保健法違反の疑惑』については、一般的な作業の範囲を外れた場所で、保護具なしで作業することを予想し、防止する義務はなかったとし、一審と同じく無罪を宣告した。遺族は厳罰を嘆願したが、裁判所は「被害者にも相当程度の過失が認められ、事故発生の責任を完全に被告人だけに転嫁することは難しい」と、量刑理由を明らかにした。A氏は上告したが、最高裁は原審の判断を維持した。

2023年3月20日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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