キム・ヨンギュンの死因は「危険の外注化」2019年8月19日

「キム・ヨンギュンは作業指示、業務規則に違反したのではなく、指示を忠実に守ったために死んだ」。
「故キム・ヨンギュン死亡事故真相究明と再発防止のための石炭火力発電所特別労働安全調査委員会」(特調委)が4ヶ月間の活動を終えて、19日に調査結果を発表した。
特調委は事故の原因を石炭火力発電所の元請け・下請け構造と指定した。民営化のために工程を無理に分けた後、色々な協力会社に外注した結果、危急な状況への備えができない程現場の疎通が断絶し、労働者が常時産業災害の危険に曝されているということだ。
特調委は発電所労働者1万人に対するアンケート、産災承認統計、健康診断資料などを分析して、「危険の外注化」が現場に実存することを立証した。
下請け業者所属の労働者は、元請けの発電会社所属の労働者よりも最大8.9倍も危険のレベルが高く事故と中毒の危険に露された。
特調委は「下請け会社が、現場労働者の取り分として発電会社から受け取った『直接労務費』の半分ほどを支給せずに持っていったと推定される」とした。特調委が労働者が納付した健康保険料から人件費を逆算した結果、下請け労働者は直接労務費の47~61%しか受け取っていない。下請け非正規職労働者の被災の危険を低くして、劣悪な処遇を改善するためには「協力会社の労働者の直接雇用・正規職化」は避けられないと勧告した。
発電会社で2014~2018年の5年間に仕事中に怪我をしたり死んだ人数は371人だ。元請け所属が26人で、下請け協力会社所属が345人。死亡者21人は全部下請けだった。子会社の労働者は元請けの労働者より、作業中に事故に遭ったり中毒になる確率が7.1倍高く、荷役業者と協力会社の労働者は元請け労働者のそれぞれ8.1倍と8.9倍だった。
特調委が作業中の事故で損傷を受ける可能性がある要素を分析した結果、墜落・転倒・衝突の危険など「不安定な作業環境」が0.278で最も高く、「元請け・下請けの違い」が0.208で続いた。特調委はその理由として、元請け・下請け間の「疎通の断絶」を挙げた。現場で危険を問題提起しても、下請けの管理者を経て元請けに到達した後、元請けの意思決定を待って、逆順で現場に降りてくる。その間に危険要素を除去しようとする努力はうやむやになったり、適切な時期を逃す。
下請け業者の複雑な業務分担も問題だ。泰安火力発電所の5~8号機の設備整備だけで6社の協力会社が投入されている。この間、責任の所在を区分しようとする手続きだけ強化された。
不法派遣を回避するためだけの元請けの消極的対応は、また別の原因だ。泰安火力発電所の燃料環境設備の運転業務は、工場のラインで行われる「連続工程」で、元請けの指揮・監督が不可欠な環境なのに、外注化によって分断された。下請け労働者に対する元請け管理者の直接指示や指揮・監督は不法派遣にあたるため、元請けは下請けの状況室を介して現場労働者と間接的に意思疎通している。特調委は「統合運営の方向に進むべきだ」と指摘した。
特調委は現場調査で、石炭を取り扱う労働者が発ガン物質などにばく露する可能性を確認した。燃焼施設に供給する前に、石炭を室内に保管する施設である屋内貯炭場では、結晶性遊離ケイ酸、ヒ素、鉛、ニッケル、ベンゼンなどの発がん性物質が検出された。結晶性遊離ケイ酸は基準値を7倍上回った。粉じんによる労働者の健康悪化も調査された。特調委が健康診断資料によって2013年と2018年の労働者の肺機能を1秒率で比較した結果、運転業者の労働者の場合、平均10%程度、肺機能が低下したことが分かった。

2019年8月19日 京郷新聞 イ・ヒョサン、チョン・テヨン記者