キム・ヨンギュン法にキム・ヨンギュンはいるか?「いない」2019年6月12日

政府が10月末までに産業安全保健法全面改正案の下位法令の改正作業を終える予定の中で、労・使・専門家の意見を聞く席が用意された。請負人の安全・保健措置責任と作業中止命令の解除手続き、危険作業の外注化防止などの争点を巡る攻防が激しく続いた。財界は「過度な元請け責任の賦課と規定の曖昧性」を指摘し、一方労働界は「請負人の安全・保健措置責任と請負禁止の拡大」を要求した。
11日「キム・ヨンギュン法にキム・ヨンギュンはいるのか?」をテーマに、産業安全保健法施行令・施行規則改正案の公聴会が行われた。国会環境労働委員会のシン・チャンヒョン共に民主党議員が主管した公聴会には、産業安全保健法改正の火種となった泰安火力発電所の非正規労働者故キム・ヨンギュンさんのお母さんキム・ミスクさんが参加した。キムさんは産業安全保健法の下位法令立法予告の中に、危険の外注化による事故性の災害が雇用労働部の請負承認作業の対象から除外されたことを指摘して、「キム・ヨンギュン法にキム・ヨンギュンがいない」と嘆いた。彼女は「改正案をキム・ヨンギュン法と呼んで、なぜ私たちの息子が、息子と一緒に働く人たちが(法の保護対象に)含まれなかったのか」、「私たちの息子のように他の人も殺すのか、なぜこの法がうちの息子を守らなかったのか訊ねたい」と声を高めた。
この日の公聴会にはパク・ヨンマン労働部労災予防補償政策局長が参加して、産業安全保健法の下位法令の改正事項を説明し、政府の立場を明らかにした。彼は「現行法は請負人の安全・保健措置義務を崩壊・墜落など22の危険場所に限定し、これ以外の場所では請負人に責任を問えなくしている」。「改正法で請負人の安全・保健措置の責任場所を事業場全体に拡大した」と説明した。重大災害発生時の作業中止命令の解除手続きに関しては、「現行法では作業中止要件を産業災害が発生する緊急で緊迫した危険だけと規定し、関連指針で重大災害時の全面作業中止を原則としている」として、「全部または一部の作業中止要件を明確にし、公正で客観的な作業中止解除の審議のために、該当事業場と外部の人間など4人以上で作業中止解除審議委員会を構成して、作業中止解除の要請日から4日以内に審議委を開催・審議するように規定したと説明した。
政府は危険作業の外注化防止のために、請負人の事業場全体に対して、需給者と同一の安全・保健措置をするように、請負人に責任を賦課したという点を肯定的に評価した。パク局長は「請負時に労災予防措置の能力を備えた適格需給者を選定する義務を新設し、代表理事に安全・保健計画樹立の義務、発注者に安全保健台帳の作成義務などを新設した」とし、「需給者の労働者を含む労働者保護を強化した」と話した。
労働界は請負人の安全・保健措置責任と関連して、訪問サービス・移動労働者の保護措置が必要だという意見を出した。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は「立法予告案で大統領令に定める22の危険場所は、場所にともなう安全・保健措置と連動されている」として「エアコン・通信ケーブルなどの設置修理、建物の外壁塗布など、産災死亡が多発する現場労働者の安全が放置されている」と憂慮した。「施行令改正案に『墜落防止のために車輌用荷役運搬機械機構、引越し荷物のリフトなど、揚重機を使わなければならない作業』を追加して、産業安全保健基準に関する規則改正案に『墜落または崩壊による危険防止』を挿入すれば、訪問サービス・移動労働者の保護が可能だ」と話した。
彼女は「産業安全保健法の改正で、元請けの責任強化対象の範囲が広くなったことは明確だ」としつつも「雇用構造の問題によって事故が繰り返される場所、例えば、九宜駅の事故のように外注化が問題であれば、元請けの責任を強化するだけでなく、該当作業を請負禁止の領域に入れるべきだ」と注文した。
一方、イム・ウテク韓国経総安全保健本部長は「立法予告案によれば、事業場はもちろん、支配・管理する場所にまで請負人の安全・保健措置責任を拡大したが、この部分に対する明確な解釈ができなければ、現場に適用する時に労使の争いが発生する可能性がある」。「請負人の支配・管理場所を、具体的で限定的に範囲縮小すべき」と主張した。作業中止基準に対しても「改正法には重大災害発生時に産災が再び発生する緊急で緊迫した危険がある場合、該当作業または同一作業に対して作業中止をしなければなければならないとしているが『緊急で緊迫した危険』というのは曖昧だ」と話した。
労働界が要求する危険作業の請負禁止の主張に関しては、「我が国の請負規制と安全規制立法は世界最高水準」として、「元請・下請け問題、すなわち請負承認問題を法律で規定するのは妥当ではない」と主張した。

2019年6月12日 毎日労働ニュース イ・ウンヨン記者