最高裁「加害同僚は求償金請求の対象外」 2022年8月23日 韓国の労災・安全衛生

最高裁判所庁舎/資料写真チョン・ギフン記者

勤労福祉公団は、同僚の加害者には保険給付支給に対する求償金を請求できないと最高裁が判決した。同僚が行った加害は、事業場が持つ危険の一つに該当するので、公団が別途に職員に責任を問うことはできないという趣旨だ。

職場上司のセクハラで極端な選択、遺族に保険給付して求償を請求

法曹界によれば、最高裁三部が19日、勤労福祉公団が保険給付をした被害者への加害者である同僚のA氏を相手に請求した求償金訴訟の上告審で、原審判決の被告敗訴部分を破棄し、事件をソウル中央地裁に差し戻した。

A氏は部下のB氏にセクハラをするなどの不法行為を犯した。B氏は約2年間、精神科の治療を受けたが極端な選択をしてしまった。公団はB氏の事故を業務上災害と認定し、遺族に保険を給付した。

公団は労災補償保険法(労災保険法)の条項によってA氏に求償金を請求した。労災保険法(87条1項)は、公団は「第三者」の行為による災害で保険給付を行った場合、給付を受け取った人の第三者に対する損害賠償請求権を代位できると定めている。

争点は求償権行使の相手である「第三者」についてだった。最高裁の判例によれば、「第三者」とは被災労働者と労災保険関係がない人で、被災労働者に対して不法行為などによって損害賠償責任を負う人をいう。事故と無関係でなければ「第三者」とは見られないという意味だ。

一・二審は加害同僚のA氏も労災保険法で定めた「第三者」に当たると判断した。同僚の職員の加害行為が、社会的な非難の可能性が非常に大きい場合、同僚が究極的な責任を負うことが社会正義に符合すると見た。

最高裁判所「同僚への加害は職場の危険」、「事業主と共に労災保険関係に」

しかし、最高裁は原審を覆してA氏の手を挙げた。A氏は事業主と共に直・間接的に労災保険に関連しており、「第三者」から除外されるという趣旨だ。2004年12月の最高裁の判例を根拠とした。

当時、最高裁は「同僚勤労者による加害行為で他の勤労者が災害に遭い、その災害が業務上災害と認められる場合、そのような加害行為は、事業場が持つ一つの危険と見ることができる」と判示した。同僚の加害行為が「一つの危険」に該当するため、これによる業務上災害は、公団に究極的な補償責任があるということだ。

これによって、同じ事業主に雇用された同僚の行為によって業務上災害を受けた場合は、労災保険法が定めた「第三者」から除外することが妥当だと判断した。A氏の事件でも最高裁は、「A氏は保険加入者である事業主と共に、直・間接的に被災勤労者であるB氏と労災補償保険関係を持つ人」とし、「第三者から除外され、公団はB氏を相手に損害賠償請求権を代位行使できないと見るべきだ」と判示した。

最高裁は「原審判決には、労災保険法87条1項で定めた『第三者』に関する法理を誤解し、判決に影響を与えた誤りがある」とした。但し、A氏のセクハラとB氏の極端な選択の間には相当因果関係が認められると判断した。

法曹界は、求償権行使の範囲を合理的に解釈した判決だと評価した。ソン・ゴンチャン弁護士は、「原審のような解釈なら、事案によっては具体的な妥当性を持つこともあるが、このような論理が固まれば、事故であっても同僚への非難の可能性が大きいケースなら、求償権の行使が可能になり得る」とし、「こうなれば、社会的な危険に関して事業主集団に責任を問うとした社会保険制度の崩壊に進む危険がある」と説明した。

2022年8月23日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=210577