フリーランサーの「電子浄水器修理士」が労災認定された。 2022年5月25日 韓国の労災・安全衛生
フリーランサーとして働いていた電子浄水器の修理技師が脳出血で倒れ、裁判所で業務上災害を認められた。勤労契約どころか委託契約さえ締結していない修理技師に、勤労基準法上の勤労者性が認められたのは初めてだ。裁判所は、修理技師が事実上本社の指示で働いて、過労と業務上のストレスに苦しめられたと見た。
指定の休日はなく、週6日勤務
待機時間含む一日12時間の労働
<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル行政裁判所が、クク電子の修理技師のAさん(58)が勤労福祉公団に提起した療養給付不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴の判決を行った。公団は不服として17日に控訴した。
Aさんは2015年6月からクク電子の代理店で、別途の勤労契約や委託契約を結ばないまま、本社から浄水器の設置・修理の業務を与えられて仕事をした。四大保険には加入しておらず、基本給もなく、作業量によって手当てを受け取っていた。
業務は本社の指示に従った。代理店が本社からの顧客目録を送ってくると、顧客の住居を訪問した。午前8時30分頃に顧客の家に着いて、午後5時30分~6時まで、修理・設置を担当した。決まった休日はなく、状況に合わせて休みながら、週に6日働いた。
苦情が発生すれば、休日でも追加の報酬なしで顧客を訪問することも多かった。退社した後も休めなかった。少なくとも2時間ずつ、廃フィルター作業をして本社に送った。顧客と翌日の訪問日程を調整していると、仕事は毎日午後9時過ぎまでかかった。
このようにして、結局2年余りで事故が起こった。2017年12月、他の顧客の家に移動する途中、待機時間を利用して散髪して出てくる途中に倒れた。Aさんは病院で脳内出血の診断を受けた。以後療養していたが、2019年4月にはパーキンソン病の追加の診断が出た。
最近10年間、脳出血に関する診療を受けたことがなかったAさんは、公団に療養給付を申請した。公団は「勤労基準法上の勤労者に該当しないだけでなく、業務と疾病の間に相当因果関係も認められない」として不承認とした。Aさんは2020年8月に訴訟を起こした。
裁判所「代理店が具体的な業務指示」
ククと書かれた作業服を着て名刺も渡す
裁判の争点は、Aさんを「勤労者」と認定できるかであった。産業災害補償保険法(労災保険法)は勤労基準法上の勤労者を労災保護の対象と定めている。Aさんは「支店長から良い評価を受ければ正規職に転換される事例もあり、人事の全権を握った支店長に相当な指揮・監督を受けた」と主張した。
裁判所はAさんの手を挙げた。裁判所は「代理店がAさんの業務地域と種類を決めていたので、具体的な業務を指示したと見ることができる」と判示した。 同時にに「作業量に従って手当てを受け取ったが、作業量は代理店によって事実上決定されていた」とし、「Aさんの報酬は勤労の代価である賃金の性格を持つ」と判示した。
Aさんがククの商号が書かれた作業服を着て、代理店チーム長と記載された名刺を顧客に渡しながら勤務していた事実も根拠になった。この他に、△クク本社が修理技師に定期評価と技術教育を実施した点、△Aさんが代理店に業務報告をしていた点、なども労災認定の根拠と判断した。更に、Aさんは体育館を運営する個人事業者として登録されていたが、業務時間に体育館を開いていたということを認めるほどの客観的な資料もないとした。
修理技師に続いて「脳出血」発病
「過労と業務ストレスが原因」
Aさんが勤労者であるということを前提に、業務上災害も認められた。裁判所は過労と業務上のストレスが原因になったと判断した。重い浄水器を車に積んで、さまざまな地域に散らばっている顧客の家を訪問し、肉体的な強度は相当だったと推定した。更に、顧客の苦情による問責性の不利益の心配と、顧客との応対過程でのストレスも業務負担の加重要因になったと見た。
Aさんの業務時間が雇用労働部の告示基準に達しないという公団の主張も受け容れなかった。公団はAさんの発病前の12週間、1週間当たりの平均業務時間が41時間だと抗弁した。これは労働部の過労認定業務時間である60時間に達しない。
しかし裁判所は「出退勤時間を確認する資料がなく、公団が把握した業務時間と実際とが一致しているとは見られない」と指摘した。Aさんが実際に勤務した時間は、公団の認定時間より長かった可能性が高いという趣旨だ。
クク・ホールディングスと委託契約を締結して働いていた浄水器修理技師のBさんも、2017年6月に脳出血を起こし、裁判所で業務上災害に該当するという判決を受けていた。土曜日を含めて週6日、一日平均10~11時間程度働いて過労であったことが認められた。Bさんの事件は、3月に控訴審で原告勝訴が確定した。
法曹界は、勤労者性と業務と疾病の間の相当因果関係が全て認められた事例は異例的だと評価する。Aさんを代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は「形式ではなく、実質的に見て、Aさんが賃金を目的に、従属的な関係で労務を提供したことを証明して、勤労者性が認められた」とし、「残業勤務などを疎明して、業務上のストレスなど、業務負担加重要因まで認められた」と説明した。
2022年5月25日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=209069