イタリアの裁判所がアスベスト訴訟でスイス人実業家に実刑判決-2022年4月6日

過去20年、イタリアのいくつかの裁判所がシュミットハイニーに対する訴訟を扱ってきた。この2015年のアーカイブ写真は、イタリア国旗を背負ってアスベスト訴訟における正義を求めるアスベスト被害者の家族たちを示している。Keystone/Alessandro Di Marco

イタリアの裁判所がアスベスト訴訟でスイス人実業家に実刑判決
Swissinfo.ch, 2022.4.6

イタリアの裁判所が、アスベスト企業の元労働者の死亡に対して、スイスの事業家シュテファン・シュミットハイニーに42か月の禁固刑を言い渡した。

イタリアのANSAニュースによると、陪審員団は、同社の元大株主であるシュミットハイニーを過失致死罪で有罪であるとした。

陪審員団は、この工場の労働者がアスベストに曝露していたことを認めた。

しかし、シュミットハイニーは水曜日に、ナポリ近郊の会社に関わる他の7人の件では無罪とされた。

シュミットハイニーの弁護士は、スイスのキーストーン-SDA通信に対し、判決はイタリアの法律と基本的法原則に反していると言って、控訴する意向を表明した。

一連の訴訟

今回の判決は、74歳のシュミットハイニーが責任を否定している、イタリアにおける一連の訴訟のなかで最新のものである。

これまで、彼は常に上級審で潔白を証明されてきた。

2014年に、注目された訴訟でイタリアの最高裁判所は、約3千人の死に対する責任を問わずに、シュミットハイニーを無罪とした。裁判官らは、1998年に時効が成立していると判断したのである。

この判決には、労働組合、環境団体、被害者の家族らから反発の声が上がっていた。

https://www.swissinfo.ch/eng/business/italian-court-sentences-swiss-businessman-in-asbestos-case/47497266

ナポリ訴訟
AFVA代理人弁護士 ローラ・ダミーコ

ナポリの裁判所[Court of Assizes]は、8人の被害者の1人であるアントニオ・バレストリエーリのアスベストに起因する死亡について、シュテファン・シュミットハイニーに対して禁固刑を言い渡した。この犯罪は、過失致死罪(omicidio colposo con colpa cosciente)に分類し直された。

「イタリア国民の名において、2022年4月6日、ナポリ裁判所は、1947年10月29日生まれのシュテファン・シュミットハイニーに対して以下の判決を下した」。主審のコンセッタ・クリスティアーノ裁判長は、午後4時少し前に判決を読み上げた。392人のアスベストによる死者のためにノヴァラの裁判所でいつもそうしているように、AFEVA(アスベスト被害者・家族協会)を代表するローラ・ダミーコ弁護士と、スイス人被告の代理人弁護士ストロフォ・ディ・アマートとグイド・カルロ・アレヴァ、が出席していた。

ナポリ検察官アナ・フラスカとジュリアーナ・ジュリアーノは起訴状のなかで、故意による殺人の認定を主張して、8件すべて(バニョーリのエタニット工場の従業員6人と2人の従業員家族)について、23年11か月の禁固刑を求めていた。弁護団は、シュミットハイニーはバニョーリ工場の労働環境を規制に適合させるためにあらゆることを行っていたと主張して、無罪判決を求めて争った。

他方、裁判所は、労働条件が十分ではなかったと判示して、被告の責任は認めたが、その行為が殺意[malice aforethought]によるものだっとは考えず、故意の違法行為[intentional misconduct]による過失[willful negligence]によるものだとした。

(過失という過重条件を伴うとはいえ)故意から過失への犯罪の再定義により、自動的に6件についての時効が成立してしまった。別の件では、「事件が存在しない」という理由で(裁判所の動機は90日後に判決の動機のなかで明らかにされるだろう)、シュミットハイニーは無罪とされた。したがって、3年半の刑罰は1人の死亡に対するものである。

「ナポリ判決は、カヴァニョーロでの2人の死亡に対するトリノ判決に沿っている」と、ダミーコ弁護士は見ている。したがって、「裁判所は、バニョーリのエタニット工場の環境条件の欠陥に対するシュミットハイニーの責任を認めたが、故意による殺人[willful murder]ではなく過失[致死]であると認定した」。判決はまた、被告は、機関・団体を含め原告らに支払うべき費用(同一裁判所または他の裁判所によって本件におけるかかる費用が評価される?)に加えて、5年間公職に就くことを禁止されるともしている。

いわゆるエタニット・ビス[Eternit Bis]訴訟は、2014年にトリノ検察庁がスイス人企業家を故意による殺人罪で起訴したことによってはじまり、その後トリノの予備審問判事(通商GUP)によって細分化されたものである。カバニョーロ(ここでシュミットハイニーは4年の判決を受け、2022年3月初旬に控訴審で確認)、そして今回のナポリである。最大の訴訟がノヴァラの裁判所で審理が行われているところであり、検察官ジャンフランコ・コレースとマリアジオヴァーナ・コンペアによる罪名は、カサーレ地域における392人のアスベスト被害者の故意による殺人である。

バニョーリの死亡に対するナポリの判決は、カヴァニョーロの死に対するトリノの判決と同様に、「カサーレ訴訟」にも顕著な道筋を示すことになるだろうか?たしかに、訴訟の分割は、同じ被告がすべての訴訟で同じ態度であったために、最初から混乱を生じさせていた。しかし、カサーレでは、他の2つの訴訟では欠けていたか、または出てこなかった、特別な責任の状況が浮かび上がっている。

例えば、シュミットハイニーがエタニット工場の経営者だった時期に決定及び実行された、工場から数百メートルの距離にあるロンツォーネのいわゆる元ピエモンテ区画での、屋外でのアスベストスクラップの破砕である。目撃者が何度も口にしたように、ブルドーザーの活動は1日に何時間も続き、家々の間に粉じんの雲を巻き上げた。細断されたがれきはその後、オッジェーロ通りに沿ってヤードから工場まで「トラック」に積まれて輸送され、ヘイズマグ精製所に運ばれて生産サイクルに戻された。労働組合は、この飛散を抑えるために闘った。「せめて輸送中のトラックに覆いをつけてくれ」と、彼らは繰り返し要求した。

ナポリではそのような破砕はなかった。どうしてか?バニョーリのスクラップはカサーレに運ばれて、すべて旧ピエモンテ工場で処理されていたからである。
もうひとつの例は、屋根裏を保温し、中庭、運動場や道路を平らにするための、工場の外への(クロシドライト-青石綿を含有した)粉じんの配布である。カサーレとその周辺には、そのような場所がたくさんあり、もっとも危険である。

これらは、現在進行中の訴訟のサイドライン上での発言にすぎない。結果を予測するのは時期尚早で、賢明ではない。

現在、ノヴァラの訴訟では、弁護団が専門家を尋問しており、彼らはPPの専門家証人によって示されたテーゼに反対している。この比較は、明らかに、社会的、衛生的、臨床的及び疫学的諸側面に焦点をあてている。
ジャンフランコ・ペゾネ裁判長が希望するように、予定された日程が守られれば、7月末には訴訟が終了し、9月には最終弁論がはじまり、秋が終わる前に判決が出るかもしれない。

当初、長年にわたりアスベスト繊維への違法な曝露を引き起こした労働条件による8人(7人のバニョーリのエタニット工場労働者と1人の地域住民)を故意に殺害したとして告訴された、シュテファン・シュミットハイニーに対する第一級刑事裁判は、今日[4月6日]、ナポリ裁判所で終結した。

アスベスト繊維への違法な曝露
裁判所は、当該工場における過酷な労働条件という検察側と原告側の再構成を受け入れたが、時効のない故意による殺人という論点については同意せず、被告に過失致死罪の判決を下した。この結果、1件(最近の死亡事例)を除いて、すべての事件が時効にかかることになった。この1件について、シュテファン・シュミットハイニーは、3年6か月の禁固刑と、加えてカサーレ・モンフェラートのAFEVAを含め様々な団体すべてに費用の支払を言い渡した。

史上最大のアスベスト訴訟/イタリア最高裁が逆転無罪
安全センター情報2015年1・2月号

イタリアのアスベスト死亡:新たな有罪判決
International Ban Asbestos Secretaria, 2019.5.24
安全センター情報2019年11月号