『産業安全保健庁』設立の議論がスタート 2020年11月23日 韓国の労災・安全衛生

産災死亡事故発生件数/資料:安全保健公団

政府が、産業災害死亡事故を画期的に減らさなければならないという文在寅大統領の注文で、勤労監督官(産業安全監督官)の増員と産業安全行政体系の改編作業に着手した。産業安全監督官を2年かけて300人増員し、建設業の産災を専門に担当する組織を新設する方案を検討している。専門担当組織の新設は、雇用労働部の労災予防補償政策局を、室-本部-庁に順次拡大していこうという議論のスタートになるものと思われる。

22日の政府関係者の話を総合すれば、労働部と行政安全部、企画財政部は、勤労監督官の増員と、建設現場の点検体系を構築するための専門担当組織の新設方案の議論を始める。大統領が17日の閣僚会議で「産災死亡者の数は少しずつ減ってはいるが、期待ほどの速度が出ていない。」「必要なら、産業安全監督の人員をもっと増やし、専門担当組織を構成して中小建設現場を密着管理するなど、常時的な現場点検体系を構築するように」指示したことに伴う後続措置だ。

世越号惨事が起こった2014年は産災死亡者も減った
産災制度の変化はなかったが、企業が警戒心を持って
文在寅大統領の『労災予防対策指示』の背景

文在寅政府は出帆当時、産災事故死亡者を半分に減らすという目標を、国政課題として提示した。一年に1000人内外だった犠牲者を500人以下にするという計画だ。政府がこのような目標値を提示したのには、2014年に発生した世越号惨事の影響があった。

<毎日労働ニュース>が安全保健公団の内部資料を入手して分析すると、2008年から2013年では、毎年1100人台の被災者が発生した。政府の公式な産災統計は、産災と承認されて産災保険給付の支給を完了した被災者数を発表するので、事故発生年度と給付支給年度が違う。概ね事故性の災害は1年後、疾病災害は死亡の5年後程度で給付支給が完了する。

政府が発表した産災統計で、死亡者が992人だった2014年に、産災で死亡した労働者は公団の推算統計では932人だ。2013年の1111人から大幅に減少した。その年に特別な産災制度の変化がなかったにも拘わらず起こった現象だ。世越号惨事の発生で、安全に対する社会的な警戒心が高まったことが影響したと分析される。制度改善が後押ししないため、2015年には977人に増え、2016年には1000人の水準を再び越えた。

この経験は、事故性の産災は減少する余地があって、これを制度的に後押ししなければならないという教訓となった。文在寅政府が産災事故による死亡者を半分に縮小することを目標にすることができた背景だ。産業安全監督官など勤労監督官を増やし、2018年には泰安火力発電所の非正規職・金鎔均労働者の死で、産業安全保健法が全面改正された。

成果がなかったわけではないが、目標には達しなかった。産災死亡者は、2017年の975人から2018年(917人)、2019年(873人)と減少したが、500人以下には可成り遠い。大統領府は、最近、国政目標の達成可能性を点検し、産災分野の不十分な点を再確認した。大統領発言は内部点検の結果報告を受けた後、程なくして行われた。

資料写真(産業安全保険庁の設立立法公聴会)/イ・ジェ記者

産業安全監督官の増員手順
労災予防補償政策局の役割強化
力になる産業安全保健委の合意

指示は電撃的に行われた。労働部の関係者は「政府内での事前の意見交換や議論がない状況で、大統領が閣僚会議で電撃的に話した。」「指示によって色々な部署が作業を始めた」と説明した。労働部は、勤労監督官の増員と専門担当組織の新設という大統領の具体的な指示によって、労働部自身の計画を立ている。産業安全監督官は、2021年と2022年の2年をかけて300人増員することに方向を決めた。政府は2017年に448人だった産業安全監督官の定員を、今年705人に増員している。8月現在、578人が現場を走っている。公開採用という採用手続きを続けており、これに300人を増員すれば、定員は1000人台になる。

建設の産災を担当する専門担当組織の新設は方向が決っている。労働部の労災予防補償政策局の中に(仮称)建設労災予防政策課を新設する方案、別途のプロジェクトチームを設ける方案など、様々な構想が出ている。どのような方向で進められようが、労災予防政策局の役割が強化されるものと見られる。また別の労働部の関係者は「建設の安全を担当する専門担当組織を作って人材を拡充するという大きな絵は描けた。」「結局、労災予防補償政策局の拡大に連結する他はない」と見通した。

労働部は経済社会労働委員会の議題別の委員会である産業安全保健委員会での合意を現実化するために、長期計画を立てている。まさに産業安全保健庁の設立だ。先ず局を室の規模に拡大し、続いて疾病管理本部(現・疾病管理庁)と類似の形態の産業安全保健本部とした後、終局的には産業安全保健庁の新設に進もうという構想だ。

政府の高位関係者は、「コロナ19事態を経験して、政府次元での災害予防体系が必要だという認識がしっかりと定着した。」「(文在寅政府の)任期内に産災死亡者を半分に減らすことが目標で、そのための労災予防インフラを備えるのも政府の役割」と話した。

2020年11月23日 毎日労働ニュース チェ・ジョンナム記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=167672