超微細アスベスト繊維(直径0.2μm以下)に関連した健康リスク-知見の状況/オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM), 2026.1.13

はじめに

アスベストが、中皮腫、肺がん及び卵巣がんなどのがんを引き起こすことは知られている。また、アスベストは、石綿肺や非悪性胸膜疾患を引き起こすことも知られている。アスベスト曝露に関連したリスクからの労働者の保護のための法的要求事項は欧州指令2009/148/EC(アスベスト指令)に定められており、オランダでは労働条件法令のもとで採用されている。この規定のもとで、労働者の曝露は可能な限り低く抑えられなければならない。

背景

耐久性のある鉱物性アスベスト繊維のサイズは、吸入後の中皮腫、石綿肺及びその他のアスベスト関連疾患の発症を決定づける要因である。アスベスト含有物質の密度に加え、繊維の直径と長さが、曝露量と生体内滞留において重要な役割を果たし、とりわけ直径は、吸入及び移行による曝露において重要な寸法である。繊維径が小さいほど、肺から胸膜、腹膜及びその他の組織への移行を促進する。
本稿における「規制対象繊維」の定義は、世界保健機関の1997年の有害とみなされる繊維の仕様に従う。これは、長さ5μm超、幅0.25~3μm、かつ長さ:直径のアスペクト比が3以上の繊維を指す。規制目的のための繊維計数は現在、位相差顕微鏡法(PCM)による繊維の可視性に基づいている。PCM
は0.20μm超の繊維しか検出できないため、総アスベスト曝露に寄与するより細い繊維は除外される。
現行の規制遵守のためのアプローチが生物学的に関連性のある繊維を除外する可能性があることを認識して、欧州委員会は、2023年にアスベスト指令を改正した(指令(EU)2023/2668)。改正版では、以下のように規定されている。
「アスベスト繊維を測定するための現行の技術では、細い繊維が計測される場合、きわめて低濃度の測定はできない。労働者の健康を高度に保護すると同時に、測定の実現可能性を適切に考慮するために、こうした技術を使用する際には、細い繊維を計数するか、または、低い濃度の限界値を適用するかを選択することが必要である。一部の加盟国は、より細い繊維を計数せずに低い限界値を選択している一方、他の加盟国は、より高い限界値を選択し、かつ細い繊維を計数している。バランスの取れたアプローチを保証する観点から、空気中のアスベスト繊維を測定する目的のために考慮される繊維サイズ、すなわち幅0.2~3マイクロメートル(μm)の繊維、及び、電子顕微鏡への技術的移行の時点からの幅0.2μm未満の繊維に応じて、異なる限界値が確立されるべきである。」
「関連する科学的技能と、同時に、[欧州]連合レベルでの労働者の適切な保護を確保するバランスのとれたアプローチを考慮して、改正される限界値が確立されるべきである。これは、特定の加盟国で使用される繊維計数方法に応じて、8時間加重平均(TWA)として、幅0.2~3μmの繊維を計数する場合は1cm3当たり0.002繊維、 または、0.2マイクロメートル(200nm)未満の繊維も計数する場合は1cm3当たり0.01繊維と同等であるべきである。」
さらに、2010年にオランダ保健評議会(HC)は、次のように指摘している。
「最近の疫学的分析では、より長くかつより細い繊維についてのより重要な役割も示唆されているが、正確な関係性は信頼性をもって導出することができなかった。したがって、繊維の長さと直径の割り当てに関する情報は、ほとんどの研究で十分に文書化されていない。」
HCの報告書から15年が経過したことを踏まえ、社会問題雇用省(SZW)はRIVMに対して、繊維の直径がアスベストの効力に及ぼす役割について新たな洞察を提供する、何らかの最近の科学的研究があるかどうか判定するよう委託した。本知見更新で、われわれは、超微細アスベストとそのアスベスト関連健康影響との関連性を検討した最近の研究を評価する。本報告書の残りの部分において、超微細アスベストは、直径0.2μm以下のアスベスト繊維と定義される。

研究課題

社会問題雇用省(SZW)がRIVMに提示した研究課題は、以下のとおりである。
・ 2010年のHCの助言公表後に発表された科学的研究は、超微細アスベスト繊維の健康リスクに関する知見の状況にどのような知見を加えたか?
本知見更新で、われわれは、2010年以降に発表されたこの主題に関する研究の知見及び限界について報告する。それらの研究が現在の知見の状況に何をもたらしたかについての結論を示し、総合的な知見に基づいた勧告を提示する。

方法

われわれは、超微細アスベストとそのアスベスト関連健康影響との関連性を検討した研究を特定するため、文献レビューを実施した。
科学文献において、直径0.2μm以下のアスベスト繊維に関連した健康リスクについて、2010年以降2024年12月までに発表された研究を検索した。Embase検索に使用した検索語句は付録1[省略]に示す。これらは、PubMed、Scopus、Web of Science検索のために調整された。全固有記録について、タイトルと抄録に基づき関連情報をスクリーニングした。最終的な採用選択は全文スクリーニングに基づいて行った。2010年以降に発表されたレビューは、健康評議会によって考慮されなかった、または、われわれの研究戦略によって特定されなかった一次研究を特定できるように、健康評議会の2010年の報告書と比較された。また、関連する研究を特定するために、含められた研究の参考文献リストもスクリーニングされた。

結果

スクリーニングを経て10件の研究が採用された。内訳は、疫学研究4件、モデリングアプローチを用いた繊維毒性の寸法パラメータに関する研究4件、肺組織の病理学的証拠を検討した研究2件である。後者には、2010年以前の研究1件が含まれており、これはHC 2010報告書では考慮されていなかった。モデリング研究の1件は、参考文献リストのスクリーニングから特定された。情報の流れの詳細は、図1[省略]に示す。選択された全研究は、より小さい繊維サイズを同定することのできる電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM))に依拠していた。

疫学研究(4)

Loomisら(2012)とHamraら(2017)は、ノースカロライナとサウスカロライナの繊維労働者の2つのコホートからなるレトロスペクティブ・プール・コホートの疫学研究を実施した。
ノースカロライナの単一コホートに関する分析は、Loomisら(2010)とHamraら(2014)によっても実施された(詳細は付録2[省略]参照)。ノースカロライナの単一コホート研究は、1950年から1973年の間にアメリカ・ノースカロライナ州の3つのアスベスト繊維製造工場のいずれかで少なくとも1日働いた3,803人の労働者(64%が男性)を対象とした。レトロスペクティブ・プール・コホート(n=6,136人の労働者、61%が男性)は、ノースカロライナ・コホートと、1940年から1973年の間にサウスカロライナ州のアスベスト繊維工場で少なくとも1日以上働いたサウスカロライナの労働者によるひとつのコホートで構成されていた。
疫学研究では、粒子の長さと直径がアスベスト関連健康アウトカムに及ぼす影響を個別に定量化しようとして、2つの異なる研究デザイン及び/または統計的アプローチが用いられた。いずれも、研究対象工場から採取した歴史的粉じんサンプルのPCM及びTEM分析に基づいた繊維サイズカテゴリーによって曝露を特徴づけた。単一コホート及びプール・コホート研究では、それぞれ77及び160の粉じんサンプルを用いて、二変量繊維サイズ分布を定義した。全体として、24の二変量繊維サイズ分布が記述された(Dementら. 2008)。これらは、4つの直径(D)(<0.25、0.25~1.0、1.0~3.0、>3.0μm)と6つの長さ(L)(≦1.5、1.5~5、5~10、10~20、20~40、>40μm)の組み合わせである。その後、二変量カテゴリーと個々の労働者の履歴に基づいて、労働者のサイズ別繊維曝露の推計が決定された。
Loomisら(2010)は、年齢(10年単位)、性、人種、暦年、出生を調整するためにポアソン回帰分析を用い、肺がん死亡率(10年遅れ)と累積繊維曝露指標との曝露-反応関係を検討した。これは、181件の登録された肺がん死亡例に基づくものである。累積曝露の推計は、繊維を測定するための異なる分析アプローチ(PCM、TEM、TEM 繊維≧5μm、TEM 繊維<5μm)及び繊維サイズカテゴリーに基づいた。TEMに基づく平均累積繊維曝露の推計は、PCMに基づく推計の16倍高いことが判明した(989.4対59.2 f-y/ml)。TEMに基づくすべての長さと直径カテゴリーの繊維への累積曝露は、肺がんリスクの増加と関連していた。長さと直径の双方を併せて考慮したTEM推計曝露に基づくモデルでは、長く細い繊維(長さ>20μm、直径0.25~<1μm)と統計的に有意な関連性がもっとも強かった。直径<0.25μmの繊維は、長さ<5μmにおいて、肺がん死亡率との関連性がもっとも高かった。長さ5~20μm及び>40μmの超微細繊維は2番目に高い関連性を示し(直径0.25~<1μmが最高)、長さ20~40μmでは3番目に高い関連性を示した(直径>3μmが1番、直径0.25~<1μmが2番)。筆者らは、データは、細い繊維と太い繊維の間で、肺がん死亡率に明確かつ一貫した差異を示さなかったと指摘している。
Loomisら(2012)は、自らの先行研究の延長のなかで、繊維サイズ特異的な曝露推計と肺がん死亡率との関連性を、ノースカロライナとサウスカロライナの繊維労働者のプール・コホートにおいて検討した。フォローアップ中に肺がんによる361件の死亡が登録された。肺がん死亡率は、すべての繊維径と有意に関連したが、もっとも強い関連は、直径<0.25μmの繊維で認められた(長さ1.5~5μm及び長さ10~20μm p<0.01、長さ≦1.5μm、長さ5~10μm、長さ20~40μm、長さ≧40μm p<0.001、すべての長さ p<0.001)。超微細繊維(直径<0.25μm)への曝露は、より太い繊維への曝露よりも肺がん死亡リスクが高い傾向を示した。
Hamraら(2014)は、ネストテッド症例対照研究デザインにおいて、3,808名の労働者のノースカロライナ・コホートを対象に、頻度論的及び階層ベイズモデリング・アプローチを用いて、異なるサイズ範囲のクリソタイルアスベストへの曝露をモデル化した。年齢を一致させるために症例対照比1:10を用い、「がん発症年齢」、性、人種、観察年を調整した無条件ロジスティック回帰分析を実施した。頻度論的アプローチでは、各繊維グループへの曝露と肺がんの関連性を独立してモデル化したのに対し、ベイズモデルでは、異なるクリソタイル繊維サイズグループへの累積曝露と肺がんの関連性を単一モデル内で検討することが可能であった。頻度論的モデルでは、ほとんどの直径と長さのカテゴリーにおいて、直径/長さが大きいグループほど、用量反応が増加することが明らかになった。直径3μm超のグループを除く各直径グループでは、長さが長いほど用量反応が増加し、同様に、各長さグループでは直径が大きいほど、用量反応が増加した。しかし、異なるサイズグループ間の強い相関のために、推計は信頼性が高いとは見なされなかった。
階層モデルを用いた場合、繊維の直系/長さの増加または減少に伴う用量反応傾向は観察されず、ほとんどの繊維グループの推計係数は、グループ化中央値の係数と類似していた。これは、これらのデータに基づけば、異なるサイズカテゴリーが肺がん発症に影響を及ぼさなかったことを意味する。筆者らは、繊維製造過程で生じる幅広の長さと直径範囲が全カテゴリー間の強い相関を引き起こし、繊維サイズと健康影響の関連性を特定しにくくしていると指摘した。とりわけ下位2サイズカテゴリー間(すなわち直径<0.25μmかつ長さ<1.5μmの繊維と直径<0.25μmかつ長さ1.5~5.0μmの繊維)で顕著であった(ピアソン相関係数 r=0.9)。階層モデリングアプローチが採用されたのは、こうした強い相関を処理できるためである。しかし、このアプローチでは、各繊維サイズカテゴリーと肺がんとの関連性を区別できなかった。頻度論的モデルは、繊維の長さと肺がんの間に用量反応関係が存在するという広く確立された知見を支持した。
Hamraら(2017)は、2014年の研究の更新において、6,136人の労働者のプール・コホートを用いて分析を再度実施した。24種類の繊維カテゴリーのうち21種類に対する累積アスベスト曝露と肺がんとの関連性が、2014年の研究と同様のデザインを用いて調査された。この大規模研究は、アスベスト繊維曝露と肺がん死亡率との関連性は、繊維の長さとともに増加するが、直径の減少に伴い増加しないという、彼らの以前の知見を裏づける結果を追加した。しかし、筆者らが指摘したように、より大規模なコホートでも繊維群グループ間の強い相関性の問題の克服には至らなかった。全繊維カテゴリーにおける肺がんについてのリスク推計は同等であり、もっとも細い繊維サイズカテゴリーの推計が誤差幅が最小であった。これは、PCM法では同定不能な含鉄繊維が、肺発がん性に寄与していることを示唆している。

ヒト組織の病理学的検査に基づく研究(2)

Adibら(2013)は、TEMを用いて石綿肺、肺がん、中皮腫を有する123名の労働者(99%が男性)の肺繊維負荷を調べ、繊維の寸法とアスベスト関連疾患との関連性を検討した。本研究では対照群が設定されなかったため、曝露労働者は非曝露集団と比較された。曝露群と対照群において、繊維負荷と含鉄小体を確立するために同じ手法が用いられた。アスベスト繊維は、短繊維(長さ0.5~5μm、直径<3μm)、細繊維(長さ≧5μm、直径<0.2μm)、WHO繊維(長さ>5μm、直径<3μm、長さ:直径比>3)の3つの大カテゴリーに分類された。アスベスト関連疾患と診断された124名の労働者の肺から検出されたアスベスト繊維の大部分は、短繊維(50%)または細繊維(30%)であり、WHO繊維は繊維全体のもっとも低い割合(20%)であることが判明した。これらの知見に基づき、筆者らは、アスベスト曝露に関連した健康リスクを評価する際には、異なる寸法基準(規制対象繊維のみに限定されない)が考慮されるべきであると提言した。
鈴木ら(2005)は、長さ8μm以上、直径0.25μm以下の、より長くより細いアスベスト繊維は、より短くより太い繊維よりも発がん性のリスクが高いというスタントン仮説の妥当性を、ヒト中皮腫組織の病理学的分析を用いて検証した。彼らは、168人のヒト悪性中皮腫の職業性症例(98%が男性)の肺及び中皮組織から採取した10,575本のアスベスト繊維を電子顕微鏡で検査した。その結果、これらの組織中のアスベスト繊維の大部分(93%)は直径0.25μm以下であり、スタントン仮説に合致する繊維の割合は、顕微鏡分析のためにサンプルをどのように準備したかによって2.3%から4.9%と、非常に低いことがわかった。これらの結果に基づき、筆者らは、細いアスベスト繊維が、ヒトの悪性中皮腫の誘発に大きく関与していると結論づけた。

繊維毒性の寸法パラメータをモデル化した研究(4)

Korchevskiy、Wylieと彼らの共同研究者は、細長い鉱物粒子(EMPs)の寸法パラメータががん誘発性に及ぼす影響を研究した(Wylieら 2020、KorchevskiyとWylie(2021, 2022)、WylieとKor-chevskiy 2023)。彼らは、統計的回帰モデルを導出し、特定部位におけるEMPsの寸法特性(長さ、幅)と当該部位について推計されたEMPのがん誘発性[potency]との関連性を推計した。
寸法特性に関するデータは、既知の組成と形態をもつ数十万本のEMPの長さと幅に関するデータを含むデータベースから取得した。このデータベースは、著者(A. Wylie教授)が収集した寸法情報に加え、公表文献やグレー文献その他の情報源からのデータセットで構成されていた。これには、空気サンプリング、バルク材料、疫学的・病理学的研究からのデータが含まれる。全データは採掘・精製産業からのものであった。寸法データは、超微細繊維の同定を可能とするTEMまたはSEMを用いて収集された。情報は、個々の粒子ごとに記載された。原データセットのいずれかで長さと幅のデータがサイズ区分として示されていた場合、各サイズカテゴリーに対数正規分布を仮定し、シミュレーションを用いて個々の粒子寸法を補完した。アスベストの毒性データは、主に中皮腫と肺がんの毒性係数を報告した公表済みの疫学研究から得られた。中皮腫誘発性(RM)は、繊維/cc-年当たりの曝露における全予測死亡数に占める中皮腫起因死亡の割合として算出された。肺がん誘発性(RL)は、累積曝露単位当たりの予測肺がん死亡数を超える超過死亡の割合として算出された。本知見更新におけるモデリング研究では、このデータベースから選択された異なる角閃石系繊維データセットが使用された。
Wylieら(2020)は、9つの採鉱・精製コホートからの寸法データを用いて、長さ5μm超かつ幅0.15μm以下または0.25μm以下の繊維と角閃石の中皮腫誘発性(RM)との関連性を記述する回帰モデルを推計した。線形モデルに基づく分析では、双方のサイズカテゴリーがRMの強力な予測因子であることが判明した(サイズカテゴリー≦0.15μm 調整済み R2=0.977、適合度(fit)-p<0.01148、サイズカテゴリー≦0.25μm 調整済み R2=0.978、fit-p<0.0072)。
2021年の研究において、KorchevskiyとWylieは、4つのコホートからの寸法データを用いて、中皮腫と肺がんの発症リスクを予測するモデルを推計した。その結果、中皮腫誘発性(RM)は、長さ5μm超かつ直径0.22μm未満の繊維比率と最も強く相関し、肺がん発症リスク(RL)は、長さ5μm超かつ直径0.28μm未満の繊維サイズともっとも強く相関することが判明した。直径約0.6~0.7μmを超える繊維については、統計的に有意な相関は認められなかった。中皮腫の場合、幅が2倍になると発症リスクは約8分の1に低下したのに対し、長さが2倍になると約2.3倍に増加した。
2022年の分析は、データベース内の77データセットから得られた128,099の細長い鉱物粒子(EMPs)に基づいていた。結果は、繊維幅が中皮腫誘発性(RM)と強く負の相関関係にあるという先行研究(ピアソン相関係数 r=-0.93、p<0.05)を裏づけるものであった。また、幅には有意な閾値が存在し、それより下ではRMとの相関がもっとも強く、それより上では相関が認められないことも示された。さらに、繊維幅の影響を強く受ける比表面積(単位体積あたりの表面積)が中皮腫誘発能との相関がもっとも高い(r=0.97)ことを示した。これは、繊維が細いほど比表面積が大きくなり、生物学的反応性と病原性が増強されるためである。肺がんについては、幅との相関はそれほど強くなかった。
WylieとKorchevsky(2023)は最新の研究において、公開データに自らが構築したデータベースからの新規情報を補足した。59のデータセットから集積した341,949件の記録を統計分析した結果、繊維幅ががんリスクの強力な予測因子であり、その影響力が長さよりも効力に大きく作用するという従来の知見を裏づけるモデルを導出した。毒性と寸法パラメータの相関は、長さ(変動の7~18%を説明)よりも幅(変動の70~83%を説明)に圧倒的に依存していた。彼らは、繊維が最大のリスクをもたらす臨界幅閾値を定義した。中皮腫については、幅0.11~0.21μm(≦0.25μm)の繊維がRMとの相関がもっとも高く、この範囲が閾値となった。ただし、0.15μm未満の繊維がRMをもっとも強く予測した。肺がんについては、予測幅は0.3μmであった。これらの分析に基づき、筆者らは、非アスベスト様粒子はより幅が広く、より脆く、かつ、アスベスト様形態に見られる危険な細繊維の割合がはるかに低いため、幅が、アスベスト様[asbestiform]EMPsと非アスベスト様EMPsの間のがん誘発性における強い差異を説明する鍵であると示唆した。

討論

本研究の目的は、直径0.2μm以下の超微細アスベスト繊維に関連した健康リスクに関する知見の現状を探ることである。これは、空気中アスベストについての既存の規制基準を見直すべきかどうかを判断するのに役立つ。検索戦略ではそれゆえ、寸法関連用語(「厚さ」、「薄さ」、「直径」)とアスベスト曝露に関連することが知られている曝露及び健康アウトカムに関する用語を組み合わせた。対象期間は15年間とし、健康評議会による2010年のレビュー以降に得られた新たな情報を補足するように設定した。

2010年時点のアスベストの寸法と毒性に関する知見の状況

健康評議会は2010年に、動物実験研究の証拠が超微細アスベストと健康被害の関連性を支持すると結論づけた。ただし、これをヒトに適切に適用することはできないと指摘した。さらに、当時入手可能な疫学研究は、より長くより細い繊維がアスベストの健康影響に関与することを示唆していたものの、繊維の長さと直径の分布に関する情報は、ほとんどの研究で十分に記録されていなかった。これは、初期の研究では、曝露を推計するためにPCMが使用されていたことも一因であった。

2025年時点のアスベストの寸法と毒性に関する知見の状況

15年を経た現在、ヒトを対象とした研究から、限定的ではあるがより多くの証拠が得られている。アスベストの寸法と毒性を扱った全10件の論文は、すべてヒトに関連するものであった。これには、プール・レトスペクティブ職業コホート研究に基づく4件の論文、ひとつの研究チームによる4件のモデリング研究、及び、ヒトの肺組織における繊維負荷に焦点を当てた2件の研究が含まれる。
モデリング研究に基づく興味深い知見として、発がん性についての繊維の長さ基準が満たされた場合、アスベスト様角閃石の中皮腫誘発性についての2つの寸法指標(長さ、幅)のうち、繊維の幅が、より感度が高いことである。これは、生物学的に関連性が確立されている5μm超の繊維に当てはまり、0.15μm未満の超微細繊維及び0.15~0.25μmの繊維にも当てはまるようだ。これらの研究は主に角閃石アスベストに基づいていることから、この傾向がクリソタイル繊維にも必ずしも当てはまるとは限らない。しかしながら、超微細繊維がヒトのアスベスト発がん性に果たす役割については、これらの異なる研究グループによる研究のいずれによっても、明確に確認することはできなかった。

高度な特性評価手法の必要性

PCMは、EU加盟国で、アスベスト曝露の特性評価のために一般的に用いられる3つの繊維計数法のひとつである。直径0.2μm超の繊維を検出することができるが、繊維の種類の同定には使用できない(Frankenら. 2025)。改正EU指令(2023/2688)は、より低い可視限界をもつ電子顕微鏡法への移行を求めている。オランダで使用されているSEM法の場合、これは0.1~0.2μmである(Frankenら. 2025)。透過型電子顕微鏡(TEM)では、0.01μmまでの繊維幅の検出及び同定が可能である。電子顕微鏡を用いることによって、全研究が、アスベスト曝露がPCM基準繊維サイズに限定されないことを示した。TEM分析に基づいて、疫学研究では、最小繊維(<0.25μm)が総繊維数の79%を占めていた。Loomisら(2010)は、TEM推計による全サイズのアスベストへの曝露レベルがPCMに基づく推計の16倍であることを示し、PCMが合計アスベスト曝露を過小評価する程度を明らかにした。Frankenと彼の同僚は、3つの分析法で得られた繊維濃度を比較し、TEMによって分析された測定がより高い繊維濃度を示すことを観察した(Frankenら. 2025)。あらゆる長さと直径カテゴリーの繊維が、肺がんリスクの増加と関連していた(Loomisら, 2010、Hamraら. 2017)。これは、曝露推計がPCM法に基づく場合、がんリスクが誤って0.20μm超の繊維のみに帰属されることを示唆している。

疫学研究からの知見

疫学研究では、繊維サイズ分布に関するデータを取得するため、過去のサンプルに対して電子顕微鏡を用いた。これは、HC 2010報告書で言及されたデータ上の制約のひとつに対処したものであるが、モデリング目的で長さと幅によって分類しようとすると生じうる、アスベスト繊維サイズカテゴリー間の多重共線性を明らかにした。ここで言う多重共線性とは、異なるサイズカテゴリー間に相関関係が存在することを意味する。その結果、各寸法変数(長さと幅)とアスベスト毒性との関連性を分離できなかった。言い換えれば、これらの歴史的実データを用いて、アスベスト毒性に対する長さと幅の影響を区別することは不可能であった。繊維の幅と長さの個別的な影響について結論を導くには、これらのパラメータを個別に検証する必要がある。これは、実験的設定においてのみ可能と考えられる。
留意すべき点として、われわれは直径0.2μm以下の超微細繊維に焦点をあてたが、選択した疫学研究では、繊維を特定のサイズ範囲で分類する際のカットオフ値として0.25μm未満を採用していた。したがって、これらの研究から得られる超微細アスベストに関する知見は、直径0.2μm以下の繊維に特化したものではない。
もうひとつの留意点は、疫学研究が繊維産業のみで実施され、基本的にひとつのコホートに基づいていることである。繊維の種類は、産業部門ごとに典型的な特徴を持つため、繊維産業のみを対象とした研究結果は産業固有の特性に影響される可能性があり、他の部門の労働者を代表するものではないかもしれない。セメント及び摩擦材製造業では、短・中長繊維のクリソタイル(グレード4~7)が使用される一方、繊維産業ではより長い繊維(グレード1~3)が必要とされる。グレード1~2は未加工または粗製アスベストからなり、3及び7は機械的処理により製造される繊維長が減少した粉砕クリソタイルである(Barlowら. 2018)。肺がんの他の危険因子を併せもつ産業において特定の繊維種が優勢な場合、アスベストとの関連性の強さを正確に定量化することは困難である。また、これらの研究では考慮されなかった職場要因の差異により、同一産業内でも職場間で変動が生じる可能性もある。さらに、肺がんと強く関連する喫煙状況の補正も行われておらず、これは研究全体の質に影響を及ぼす。
これらの限界はあるものの、疫学研究は、SEM及びTEMに基づく曝露推計を用いて超微細アスベスト繊維のがん誘発性における役割を調査することで、従来の研究よりも一歩進んだ。超微細アスベスト繊維が、合計アスベスト曝露量に大きく寄与することを示した。ただし、その知見は、直径が肺がん誘発性における重要な共変因子であることを示唆しているものの、粒子サイズフラクション間の高い共線性により、異なるサイズフラクションとがんとの関連性を確立する試みは失敗に終わった。この共線性を克服するために設計された階層モデル(Hamraら. 2014)を用いた後も、繊維サイズグループ別の肺がんリスクを推計することは依然として不可能であった。この状況は、プール・コホートを用いた分析(Hamraら. 2017)を実施した後も変わらなかった。これらの研究は、アスベスト関連疾患における超微細繊維の役割を明らかにするうえで限定的な価値しかもたない。したがって、これらの疫学研究のみに基づいて関連性を確認したり、影響の大きさを定量化したりすることは不可能である。

病理学的研究からの知見-肺がん負荷の寸法的側面

もっとも細い直径の繊維は、沈着される前に肺の深部まで浸透する可能性がもっとも高く、繊維の直系が小さいほど肺から胸膜、腹膜、その他の組織への移行が容易になる。しかし、肺繊維負荷に基づくアスベスト毒性の長さや幅に依存したモデルは存在しない。肺繊維負荷に関する情報は、曝露の残存部分の遡及的評価とリスク予測を容易にする。両病理学研究は、病変を有するヒト肺組織内に残存する繊維の種類を同定及び特徴づけるために肺繊維負荷を用いた。その仮説は、組織内で同定された繊維の種類がアスベスト毒性に関与している可能性が高いというものである。
両研究とも、病変肺組織に保持された繊維は、主に規制対象繊維ではないと報告した。Adibらの研究では、超微細繊維(直径<0.20μmかつ長さ>5μm)が総繊維数の30%を占め、鈴木らの研究では、<0.25μmの繊維が93%を占めた。この割合の差異は、複数の要因によるものである。クリソタイル繊維はもっとも細い繊維であり、Adibらの研究では、全繊維の33%、鈴木らの研究では61%を占めた。さらに、Adibらは、未知量の短超微細繊維を含む短繊維(直径<3μmかつ長さ<5μm)も調査した。Adibらの研究では、規制対象繊維が繊維中もとも低い割合を占めた。一方、鈴木らは、長く細い繊維ではなく短く細い繊維の影響に焦点を当てていたため、肺組織中の繊維と規制対象繊維の比較は行わなかった。いずれの研究においても、ヒト組織中に認められた繊維の大半は、細い繊維(短く細いと長く細いを問わず)であった。これは、これらの繊維が、アスベスト関連疾患の発症に重要な役割を果たしていることを示唆している。しかし、これらの研究に基づいて関連性を確認したり、影響の大きさを定量化したりすることは不可能である。

モデリング研究からの知見

Wylie、Korchevskiyと彼らの同僚による研究は、広範かつ独自のデータベースからの寸法データに基づき、アスベストの毒性における超微細繊維の役割について新たな知見を提供する。しかし、研究の実施方法には限界があり、報告内容の透明性が欠如しているため、その完全な価値を評価することは困難である。個々の粒子サイズに関するデータ不足を補うために用いられたシミュレーション手法は明確に記述されていなかった。また、シミュレーションデータの使用が結果に与えた影響についての記述もなかった。この場合、感度分析が有益であったはずである。2021年の論文では、モデル構築に用いた19,509個の粒子データの82%が補間データであった。さらに、2021年モデルの検証に用いたデータはすべてオリジナルデータであったが、その数はわずか638粒子に過ぎなかった。これは、モデル性能を正確に評価するために必要とされる推奨サンプルサイズ(全データの10~15%)を下回っている。
モデル化に使用されたデータセットが、主に角閃石系アスベストを対象としたものであることに留意すべきである。このため、アスベストの種類に特有の他の要因(例えば化学組成)がアスベストの毒性に影響を及ぼす可能性があることから、クリソタイルアスベストに対する知見の移転可能性を制限する。
これらの研究は、こうした限界を踏まえて考慮されるべきである。それにもかかわらず、その結果は、幅が中皮腫リスクの主要な要因であり、繊維幅≦0.15μmがアスベスト様角閃石の中皮腫誘発性をもっとも強く予測することを示唆している。幅を2倍にすると、中皮腫発症リスクが約8分の1に低下したのに対し、長さを2倍にしても、約2.3倍の低下にとどまったことは、RM[中皮腫誘発性]の二次元パラメータにおいて、幅が、より感度の高い指標であることを示唆している。また、直径≦0.15μm及び≦0.25μmの超微細繊維が、アスベスト関連疾患の発症に関連していることも示唆されている。これは、繊維の長さが、アスベスト毒性の重要な共変量であり続ける一方で、他の共決定因子(例えば長さ>5μm)の特定パラメータ値下では、幅の方が、発がん性をより予測し得ることを示唆している。これらの研究結果と、規制改正に影響を与える可能性のあるその価値について、さらなる精査が必要である。

結論

2010年のHC助言発表後に公表された科学的研究は、直径0.2μm以下の超微細アスベスト繊維がヒトにおけるアスベストの毒性に関与しているという主張を支持している。しかし、現時点で入手可能な証拠は、その影響の大きさを定量化するには不十分である。この限界はあるものの、過去15年間(2010~2025年)に発表された関連研究の大半は、アスベスト吸入に伴う健康リスクを評価する際には、直径0.2μm以下(あるいは少なくとも0.25μm以下)の超微細アスベスト繊維を考慮すべきであると結論づけている。この限られた新規証拠の評価に基づき、われわれはこの結論に同意する。われわれは社会問題雇用省(SZW)に対して、この結論がオランダのアスベストの職業曝露限界値(2,000繊維/m3[0.002繊維/cm3])に与える影響に関するさらなる研究の実施を勧告する。また、直径0.2μm以下の超微細アスベスト繊維を測定する現実的実現可能性についても検討すべきである。

https://www.rivm.nl/publicaties/health-risks-associated-with-ultrafine-d-02-m-asbestos-fibres-state-of-knowledge

安全センター情報2026年5月号