オーストラリア:アスベスト国家戦略計画 第3段階 2024~30年/Asbestos and Silica Safety and Eradication Agency, Australia

2003年12月31日に導入されたオーストラリアのすべての種類のアスベストの全面禁止20周年と重なることになる、第3段階アスベスト国家戦略計画を発表できることを誇りに思う。

この計画を作成するにあたって、われわれはオーストラリアにおけるアスベスト関連疾患根絶に向けてなされた大きな進展を反映させるとともに、継続的な行動・改善を必要とする領域を特定するために幅広い関係者と協議を行った。

この計画はまた、2012年アスベスト管理レビューの勧告に対する実績の分析及び安全にアスベスト除去率を増加するための選択肢の経済的評価を含め、幅広い調査にも基づいている。約600万トンの老朽化したアスベスト材料がいまもなお建築環境に残っていることから、安全で積極的な除去・廃棄により焦点を当てる緊急の必要性がある。

最終的な文書の形成に大きく貢献した、オーストラリア中の政府、労働組合、業界団体の代表を含む、関係者の貢献に感謝したい。われわれは、アスベストの有害な遺産の終焉に向け、アスベスト国家戦略計画の実施において、引き続き全政府を支援していく。

ポール・バスチャン
(アスベスト・シリカ安全・根絶評議会議長)
ジョディ・ディークス
(アスベスト・シリカ安全・根絶機関CEO)

訳注:アスベスト安全・根絶機関(ASEA)は、シリカを含むように同機関の機能を拡張する法改正により、2023年12月7日にアスベスト・シリカ安全・根絶機関(ASSEA)に改称された。

  • 推計4,000人のオーストラリア人が毎年アスベスト関連疾患によって死亡している。1
  • 約640万トンのアスベスト材料がわれわれの建築環境に残されている。2
  • アスベストはオーストラリア中の家屋の3分の1に存在している。3
  • 建物からのアスベスト除去を増加することによって2100年までに28,000人の死亡防止することができる。4
  • アスベスト材料が劣化するほどそれらが引き起こすリスクは増大する。5
  • 災害からの復旧にかかる時間と費用はアスベストが存在する場合は大幅に増加する。5
  • アスベスト除去率を高めるために費やされる1ドルごとにオーストラリア経済にプラスの純利益をもたらすことができる。4
  • 世界的には消費は半減して2022年には130万トンに減少したものの、128か国がいまなおアスベストを使用している。6

目次

アスベスト国家戦略計画について

アスベスト国家戦略計画(ANSP)は、全国的に一貫性のあるコーディネーションの取れた行動を通じて、オーストラリアにおけるアスベスト関連疾患(ARDs)を根絶するために、段階的なアプローチを提供するものである。

第1段階(2014~2018年)
第1段階(2014~2018年)は、アスベスト遺産を理解するための証拠の基盤を確立することに焦点を置いた。
この作業には以下が含まれていた。

  • ナショナル・アスベスト・プロファイルの作成
  • ARDの経済的負荷及び中皮腫の将来的負荷の推計
  • アスベストに関する意識[awareness and atti-tudes]の全国的ベンチマーク調査の実施

第2段階(2019~2023年)
第2段階(2019~2023年)には、意識を向上させること及びアスベスト含有物質(ACMs)のより効果的な管理・除去を支援することを目的とした諸行動が含まれた。
進捗状況は、全国住宅アスベストヒートマップの最初のバージョンの完成を含む、9つの国家目標・達成に対して測定された。

第3段階(2024~2030年)
第3段階は、この進展の上に構築されるもので、以下のことをできるようにするために、老朽化したACMの安全な除去を支援するための現実的な対策に焦点をあてる。

  • 将来の世代が病気に苦しむのを防止する。
  • 環境のさらなる汚染を防止する。
  • 安全な優先順位づけした除去により、費用の削減はもちろん、重要な健康面及び環境面の利益を最大化する。

このANSPはまた以下のことも目的としている。

  • アスベスト関連疾患に罹患する労働者その他の者の生活の質を改善するために支援する。
  • 世界的アスベスト禁止のためのキャンペーンをリードするオーストラリアの国際的役割を促進する。

われわれの課題

過去35年間にわたるアスベスト管理・除去アプローチの改善にも関わらず、アスベスト関連疾患の率は予測されたほど減少していない。
毎年4,000人以上のオーストラリア人がアスベスト関連疾患によって死亡しており、アスベストはオーストラリアにおける労働関連死亡の単一の最大原因となっている。

2003年のオーストラリアにおけるアスベストの全面禁止は、据え付け済みのACMsには適用されなかった。これは、20年経ったいまでも、相当量の遺産ACMsがなお公共・商用建物、住宅やインフラに残っていることを意味している。

オーストラリアの建物にあるアスベスト製品は30~100年前のものである。これは、ACMsが劣化しつつあることを意味しており、アスベスト繊維に曝露するリスクを高める。気候変動及びオーストラリアにおける異常気象やその他の災害の頻度・強度の上昇も、アスベスト繊維への曝露のリスクを高めている。ACMsはこのような出来事によって損傷・攪乱され、また、その後に行われる清掃作業は危険であり、時間も費用もかかる。

国際的には、128か国がアスベストを使用し続けており、ACMsの製造・貿易に対する世界規模の禁止が達成されるまでは、アスベスト製品が違法にオーストラリアに入ってくるリスクがある。

本ANSPのもとでのわれわれの主要な課題は、この致死的な遺産の除去を優先することである。

このためには、職場と家屋における除去を奨励・促進するために必要な支援の実施を確保することはもとより、ACMsをそのまま管理することの容認をやめて、リスクを管理するとともに安全にACMsを除去する積極的アプローチへシフトする必要がある。

現在のアスベストに対する労働安全衛生規則は、ACMsを除去することによりリスクを根絶することが実行可能であってさえも、リスクを最小化するための低次元の古い管理の使用に焦点を置いているために、職場における除去を抑止している。これは、ACMの除去が多くの場合、ご都合主義的にまたはACMsがすでに損傷している緊急事態の場合にしか、行われないことを意味している。

さらに、公衆衛生法及び環境保護法による効果的な管理の欠如が、家屋におけるアスベストの安全な除去を危うくしている。

原則

5つの原則が、本戦略のもとでの行動を手引きする。

  1. ベストプラクティス:持続的な改善を実現するとともに、もっとも脆弱な人々を含む、もっともリスクの高い領域にわれわれの焦点が置かれることを確保するために、証拠に基づいたプラクティスを採用する。
  2. 効率性:われわれの集団的努力を活用することによって重複をなくす。
  3. 透明性:役割と責任を認識するとともに、行動と成果を共有及び公けに報告する。
  4. パートナーシップ:諸政府は、われわれの行動の到達と影響を拡張するために、非政府団体やオーストラリアの諸コミュニティと協力する。
  5. コーディネーション:諸行動は、効果的であり、目標が絞られ、一貫性があることを確保するために、すべての層の諸政府にまたがり、またそれら内でコーディネートされる。

協力

アスベストという災厄に対処するためには、多数の政府機関、研究者、産業界、使用者団体、労働組合、アスベスト関連疾患被害者支援団体、及び公衆衛生団体を含む、関係者の多様なグループの協力した努力が必要である。

ANSPは、以下のことを確保するためのメカニズムである。

→オーストラリア政府と州・準州政府が、共有された目的のために協力するとともに、優先順位と戦略的行動が国全体でコーディネートされていること。

→各々の管轄においてアスベストに関連した責任を有する政府諸機関が、アスベスト諸問題に対処するうえで、政府全体としての対応を提供するために協力すること。

→地方またはその他政府と非政府団体が、その行動を連携させることによって、実施を促進、支援及び影響を及ぼすこと。

→支援団体と幅広いコミュニティが、アスベスト関連疾患とそれらがもつ壊滅的な影響を防止するために行動がとられているという確信をもつこと。

この大きな問題を管理することは、諸行動が一貫性があり、効率的かつ効果的であることを確実にするために、全員が協力する必要があることを意味している。

●実施

ANSPの効果的な実施は、各管轄区域が機関間コーディネーショングループを確立するとともに、自らの行動計画の策定を手引きするためにANSPを活用することにかかっている。そうすれば機関間コーディネーショングループは、管轄区域のベースラインと優先事項にしたがって、関連する管轄区域の目標及び実施の時間枠設定することができる。

●評価と進捗の報告

すべての管轄区域は、各々の目標に対する進捗を評価し、アスベスト・シリカ安全・根絶機関(ASSEA)に報告する。

ASSEAは、2013年アスベスト・シリカ安全・根絶機関法の要求事項に沿って進捗を報告する。ASSEAは、年次報告書を作成し、すべての関係閣僚に提供するとともに、そのウエブサイト上で公表する。

アスベスト・シリカ安全・根絶評議会は、ANSPの諸目標の首尾よい実現を支援するために、継続的な手引き、助言及び勧告を提供する。
ANSPの中間レビューは、必要な場合には、国家行動計画・目標を調整する機会を提供するだろう。

アスベスト安全システム

ANSPの首尾よい実施には、以下の間の協力がかかわっている。

  • 実施者:オーストラリア政府と州・準州政府はANSP諸行動の実施及びその諸目標の達成に責任を有している。幅広い諸機関が、方針の策定とアスベスト関連法の遵守の執行に包括的な役割をもっている。
  • パートナー:(地方自治体を含む)地方政府や非政府団体は、行動を促進、支援及び影響を及ぼすうえで重要な役割を果たす。

[訳注:以下、具体的行動の記述において、「L:」は実施者(主導者)、「P:」はパートナーを指す。]

戦略は3つの目的をもっている:

目的1:オーストラリアにおけるアスベスト関連疾患(ARDs)を根絶する。
アスベストのライフサイクルの各ステージにおいて大気中アスベスト繊維への曝露を防止する。

優先課題1:正確な確認と一貫性のある評価
優先課題2:リスク管理と優先順位づけされた除去
優先課題3:安全かつ効果的な輸送・廃棄

目的2:アスベスト関連疾患に罹患する労働者その他の人々を支援する。
診断・治療・支援を改善することによって、ARDsに罹患した人々の生活の質を改善する。

優先課題4:適当なケア・治療を提供できるようにするためのアスベスト関連疾患の早期診断
優先課題5:アスベスト関連疾患に罹患した人々とその家族・介護者がケア・支援システムにアクセスし、容易にかつ尊厳をもって利用することができる。
優先課題6:診断方法、治療方法及びその他の処理方法の継続的な改善

目的3:国際的リーダーでいる。
アスベストの製造・貿易に対する世界的禁止を確保することに焦点を置く。

優先課題7:東南アジアにおける能力構築
優先課題8:アスベスト禁止に関するオーストラリア政府の立場を推進する
優先課題9:アスベストを含有する製品の違法輸入を効果的に防止及び対応する

各々の目的について、変化を達成するための障壁が、それらの障壁を克服するための推進要因とともに、確認されている。

各々の目標は専用の国家行動計画をもっている。

≪目的1≫オーストラリアにおけるアスベスト関連疾患の根絶、大気中のアスベスト繊維への曝露の防止

●優先領域

優先課題1:正確な確認と一貫性のある評価
優先課題2:リスク管理と優先順位づけされた除去
優先課題3:安全かつ効果的な輸送・廃棄

●変化を達成するための障壁

能力の障壁

  • ACMsがみつかる場所と安全に対処する方法を含む、アスベストに関する認識の不足
  • ACMsの確認にかかわる技術的複雑さ
  • 法的要求事項に対する意識の不足

機会の障壁

  • ACMの所在と状態に関する集中化された情報の不足
  • アスベスト関連諸法と行政諸手続の管轄区域の重複と不整合
  • 処理能力

動機の障壁

  • ACMsに関する知識・能力における過信
  • 正しいことをしなかったためにつかまるリスクと可能性についての誤ったまたは不正確な態度・信念
  • 除去・廃棄の費用

●障壁を克服するための推進要因

①アスベスト・リスクについての意識を向上させる。
②知識、スキル及び労働者のキャパシティを改善する。
③関連する法的諸枠組みを強化・整合化する。
④アスベスト関連諸法の遵守を支援・執行する。
⑤インセンティブを確信するとともに、行動に刺激を与える。
⑥方針・慣行に情報を提供する調査・データ収集を実施する。

[訳注:以下、具体的行動の記述において、「D:丸数字」は、この「推進要因」を指す。]

【優先課題1】正確な確認と一貫性のある評価

●なぜ優先課題なのか?

ACMsの存在、位置及び状態を特定するための強固で標準化されたプロセスは、優先順位づけされたアスベスト除去計画の策定を含む、大気中のアスベスト繊維への曝露を防止するために取られるべき効果的な諸行動を可能にする。

●成功はどのようなものか?

正確なアスベストの確認と一貫性のあるリスク評価が、職場のアスベスト登録と管理計画を改善し、リスクに基づいた除去が生じることを可能にする。

住宅所有者が、ACMsが所在する場所を知り、アスベスト曝露を防止するための行動をとることができるようにする。

●行動

〇以下を対象にした全国アスベスト啓発キャンペーンを実施する。

  • DIY・建設職人
  • オーストラリア先住民
  • 文化的・言語的に多様な人々(CALD)
  • 遠隔地・地域コミュニティ
  • 住宅用不動産の買手・売手
  • 住宅用不動産の借主・貸主
  • 学校コミュニティ

D:①/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇以下のためのアスベスト関連訓練を改善する

  • 実習生、廃棄物の処理・運輸労働者を含む労働者
  • アスベスト調査者
  • 建物調査者・認証者
  • 環境衛生職員
  • 不動産業者・不動産管理者

D:②/L:全政府/P:使用者代表、訓練機関、雇用・技能評議会

〇自然生成アスベストを含むアスベスト調査を実施するための全国ガイダンスを作庭する。
D:②/L:ASSEA/P:全政府、労働組合、使用者代表、アスベスト専門家

〇アスベスト所専門家のための認証システムの拡張を支援する。
D:②/L:ASSEA/P:全政府、アスベスト専門家

〇一定の労働者に対してアスベスト啓発キャンペーンを実施する。
D:③/L:全政府/P:労働組合、使用者代表、訓練機関

〇住宅用不動産におけるアスベストの確認・開示を実施する。

  • 売買・賃貸時に
  • 住宅用不動産におけるACMsの確認のための改善インセンティブ承認を計画・開発するために

D:③/L:全政府/P:不動産業界

〇アスベストに関連した苦情申立・事件に対する対応・調査を継続する。
D:④/L:全規制当局

〇リアルタイム検出技術を改善する。
D:⑤/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇全国住宅アスベストヒートマップを改善・促進する。
D:⑤/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇あらゆる種類・形態のアスベスト繊維を確認する分析技術を拡大する。
D:⑤/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇一貫性のあるACMリスクアセスメント・アプローチを達成するための技術の利用を促進する。
D:⑤/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇アスベスト登録のための全国的な公けにアクセス可能なプラットフォームの設立を支援する。
D:⑤/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇定期的な意識調査と啓発キャンペーンの評価を実施する。
D:⑥/L:AEEA/P:全政府、非政府団体

〇よりよい管理に関する情報を得るために、遠隔地の先住民コミュニティを含め、遺産アスベストを確認するために人工知能を活用する。
D:⑥/L:AEEA/P:全政府、非政府団体

〇アスベストのストックとフローの含む管轄区域アスベスト・プロファイルを策定する。
D:⑥/L:AEEA/P:全政府

【優先課題2】リスク管理と優先順位づけされた除去

●なぜ優先課題なのか?

アスベスト材料は製品寿命に達し、劣化しつつあり、アスベスト背にへの曝露のリスクを増加しつつある。大規模な介入がなければ、オーストラリアは2060年まで、約100万トンのACMsをそのまま保有することになる。

●成功はどのようなものか?

ACMsの除去率が増加し、2100年という現在の予測よりも相当早く建築環境から除去されるようになる。ACMsが安全に除去されるまでは、曝露リスクが効果的に管理される必要がある。

●行動

〇以下を対象にした全国アスベスト啓発キャンペーンを実施する。

  • DIY・建設職人
  • オーストラリア先住民
  • 遠隔地・地域コミュニティ
  • 積極的な除去を促進するために不動産の所有者/管理者
  • 労働安全衛生(WHS)法のもとでの義務に関して義務保持者

D:①/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇安全衛生代表がアスベスト・リスク管理に関連した自らの役割を行使できるようにするための資源・ガイダンスを提供する。
D:②/L:セーフワーク・オーストラリア、ASSEA/P:全政府、労働組合、使用者代表、訓練機関

〇CALD学生を含め、アスベスト除去者の認可のための職業教育・訓練コースの効果をレビューする。
D:②/L:セーフワーク・オーストラリア、ASSEA/P:全政府、労働組合、使用者代表、訓練機関、雇用・技能評議会

〇ACMsを除去する業界のキャパシティを評価する。
D:②/L:ASSEA/P:アスベスト専門家

〇政府が資金提供するアスベスト除去計画のためのベストプラクティス・アプローチを開発する。
D:②/L:ASSEA/P:全政府、地方政府、非政府団体

〇規制諸当局と地方政府が協力するためのガイドラインンを策定することによって、遵守・執行に対する政府全体アプローチを促進する。
D:②/L:ASSEA/P:全政府、地方政府

〇以下を含め、セーフワーク・オーストラリアのモデルを通じて、アスベスト・リスク管理の改善と優先順位づけされた除去の支援のためのモデルWHS規則のレビュー・改定を進展させる。

  • 訓練
  • 時間枠を特定した優先順位づけされたACM除去の確保におけるアスベスト管理計画の有効性
  • 欧州委員会によって合意された変更に沿った、職業曝露限界引き下げへの移行
  • 2003年12月31日より前に据え付けられたハイリスクACMsに関連して通告を発行するWHS規制当局の能力
  • 飛散性アスベストの定義
  • 封じ込めを含め、現在の管理の有効性
  • 無認可除去

D:③/L:セーフワーク・オーストラリア/P:全政府、労働組合、使用者代表、アスベスト専門家

〇セーフワーク・オーストラリアのプロセスを通じて、モデルWHS規則の変更に沿ったモデルWHS実施基準・ガイダンスのレビュー・改定を進展させる。D:③/L:セーフワーク・オーストラリア、ASSEA/P:全政府、労働組合、使用者代表、アスベスト専門家

〇例えば自らアスベストを除去する住居所有者など、WHS法が適用されない状況における、安全なアスベスト除去・廃棄のための要求事項を強化する。
D:③/L:公衆衛生諸機関/P:ASSEA

〇アスベスト責任を含め、企業の報告義務の拡張について調査する。

  • 財政報告の中で
  • 環境・社会・ガバナンス報告の一部として

D:③/L:オーストラリア政府/P:使用者代表

〇アスベスト関連法の順守を促進する年次キャンペーンを開発する。
D:④/L:全規制当局/P:ASSEA、非政府団体

〇許可・認可制度に対する監督の有効性を確保する。
D:④/L:全規制当局/P:ASSEA

〇不遵守に対する罰則について啓発するとともに、成功した執行成果を公表する。
D:④/L:全規制当局/P:ASSEA

〇公的に所有・管理される施設について、リスクに基づき、優先順位づけされたACM除去計画を策定する。
D:⑤/L:全政府/P:ASSEA

〇水質・土壌を含め、職場・非職場環境における低レベル曝露について調査研究する。
D:⑥/L:ASSEA/P:研究者、大学

【優先課題3】安全かつ効果的な輸送・廃棄

●なぜ優先課題なのか?

オーストラリア中の環境保護諸機関と地方当局が、人間の健康と環境の双方を害する不法投棄という課題に直面し続けており、コミュニティに対する重大な清掃費用につながっている。アスベストの合法的な処分に対する障壁は、費用、利便性及び意識である。

●成功はどのようなものか?

アスベスト廃棄物が除去から廃棄まで追跡することができる。
より容易かつ安全なアスベスト処理の選択肢が、合法的処分に対する障壁を取り除く。

行動

〇以下を対象とした全国アスベスト啓発キャンペーンを実施する。

  • 不法投棄
  • 災害事象に対する対応

D:①/L:ASSEA/P:全政府、非政府団体

〇以下に関するガイドを開発する。

  • 建設・解体廃棄物における汚染
  • 廃棄物施設オペレーター・労働者のためのアスベスト安全
  • NEPM廃棄物コードのもとで一貫性をもって正確にアスベスト廃棄物を分類する方法
  • 緊急時対応

D:②/L:ASSEA/P:全政府、労働組合、使用者代表、セーフワーク・オーストラリア

〇全国的な一貫性を達成するために、アスベスト廃棄物運送の認可・認可料の整合性のある閾値について調査する。
D:③/L:オーストラリア政府/P:全政府

〇WHS法・環境保護法のもとでの、土壌中のアスベストの存在を判定するための要求事項の間の整合性について調査する。
D:③/L:オーストラリア政府/P:全政府

〇NEPM廃棄物コード(N120・N220)のもとで別々に報告されるようにするために、アスベストに汚染された土壌・瓦礫のために追加の廃棄物コードをつくることについて調査する。
D:③/L:オーストラリア政府/P:全政府

〇アスベストに関連した苦情申立・事件に対応・調査する。
D:④/L:環境保護諸機関/P:地方政府

〇アスベスト関連法の順守を促進するための年次キャンペーンを開発する。
D:④/L:環境保護諸機関/P:地方政府

〇許可・認可制度に対する監督の有効性を確保する。
D:④/L:環境保護諸機関/P:地方政府

〇不遵守に対する罰則について啓発するとともに、成功した執行成果を公表する。
D:④/L:環境保護諸機関/P:地方政府

〇アスベスト除去の届出に統合される、全国的に一貫性のあるアスベスト廃棄物追跡システムを開発する。
D:⑤/L:全政府/P:地方政府、廃棄物業界

〇責任あるACM廃棄を促進するためのインセンティブを改善する。
D:⑤/L:全政府/P:地方政府、廃棄物業界

〇将来の廃棄物処理キャパシティについてのニーズアセスメントを実施する。
D:⑤/L:全政府/P:地方政府、廃棄物業界

〇アスベスト廃棄物データ推計を更新する。
D:⑥/L:ASSEA/P:全政府、廃棄物業界

〇不法ACM投機のパターン・ホットスポットを確認する。
D:⑥/L:ASSEA/P:全政府、廃棄物業界

〇代替的アスベスト廃棄物処理技術を監視する。
D:⑥/L:ASSEA/P:全政府、廃棄物業界

≪目的2≫アスベスト関連疾患に罹患する労働者その他の人々に対する支援、アスベスト関連疾患に罹患した人々の生活の改善

●優先領域

優先課題4:適当なケア・治療を提供できるようにするためのアスベスト関連疾患の早期診断
優先課題5:アスベスト関連疾患に罹患した人々とその家族・介護者がケア・支援システムにアクセスし、容易にかつ尊厳をもって利用することができる。
優先課題6:診断方法、治療方法及びその他の処理方法の継続的な改善

●変化を達成するための障壁

  • 診断、治療及びアスベスト関連疾患に罹患した人々の支援のスキルをもった専門家と関連保険職の不足
  • アスベスト関連疾患に罹患した人々のための支援サービスに対する資金供給の不足
  • 前臨床研究と臨床治験に対する資金供給の不足

●障壁を克服するための推進要因

① アスベスト・リスクについての意識を向上させる。
② 知識、スキル及び労働者のキャパシティを改善する。
⑤ インセンティブを確信するとともに、行動に刺激を与える。
⑥ 方針・慣行に情報を提供する調査・データ収集を実施する。

【優先課題4】アスベスト関連疾患の早期診断

●なぜ優先課題なのか?

アスベスト関連疾患の早期診断は、疾病の進展を防止し、生存率を高めるのを助けるために不可欠である。

●成功はどのようなものか?

アスベスト関連疾患の早期診断の訓練を受け、適切に対応と照会ができる医療・保健専門家の数の増加

●行動

〇アスベスト関連疾患に罹患した人々のために診断・介護に関する医療・保健専門家における意識を啓発する。
D:①/L:ASSEA/P:研究者、医療・保健専門家、専門家団体・学会、アドボカシー・支援団体

〇ARDsの早期診断を支援するために、医療・保健専門家向けガイド(アスベスト曝露に関連した職業・非職業歴聴取のための指示を含む)の開発・普及を支援する。
D:①/L:ASSEA/P:研究者、医療・保健専門家、専門家団体・学会、アドボカシー・支援団体

【優先課題5】ケア・支援システムの早期利用案内

●なぜ優先課題なのか?

ARDの診断は、身体的にだけでなく、精神的及び経済的にも、罹患した者にとって圧倒的でありうる。オーストラリア中の非営利のARD支援団体が、ARD罹患者、その家族、友人及び介護者がこの病気と生きるのをより楽にするための助言と援助において重要な役割を果たしている。

●成功はどのようなものか?

ARDsに罹患した人々が

  • 容易にかつ尊厳をもってケア・支援システムを利用することができる。
  • 必要とする支援、ケア及び治療に適示かつ公平にアクセスすることができる。

●行動

〇オーストラリア中のアドボカシー・支援団体を支援する。
D:②/L:全政府

〇ARDs罹患した人々のための最適なケアに関するガイドの開発・普及を支援する。
D:①/L:ASSEA/P:研究者、医療・保健専門家、専門家団体・学会、アドボカシー・支援団体

【優先課題6】診断・治療・その他の処理方法の改善

●なぜ優先課題なのか?

診断方法、治療方法及びその他の処理方法を改善することは、ARDに罹患した人々がより長く、より健康的に生きることを助ける。

●成功はどのようなものか?

ARD調査研究に対する資金提供の増加とARDに罹患した人々のためのよりよい健康成果。

●行動

〇中皮腫その他ARDsの診断・治療のための証拠に基づいた臨床慣行ガイドラインの開発を支援する。
D:①/L:ASSEA/P:研究者、医療・保健専門家、専門家団体・学会、アドボカシー・支援団体

〇臨床前研究・臨床治験の実施を含め、進行中のARD研究を支援する。
D:①/L:ASSEA/P:研究者、医療・保健専門家、専門家団体・学会

≪目的3≫国際的リーダーでいるアスベストの製造・貿易に対する世界的禁止を確保するために行動する

●優先領域

優先課題7:東南アジアにおける能力構築
優先課題8:アスベスト禁止に関するオーストラリア政府の立場を推進する
優先課題9:アスベストを含有する製品の違法輸入を効果的に防止及び対応する

●変化を達成するための障壁

アスベスト禁止を進展させるための単一の最大の課題は、製品のいかなる規制も阻止しようとする、アスベスト産業と主要アスベスト輸出国による多大な努力であり続けている。

●障壁を克服するための推進要因

① アスベスト・リスクについての意識を向上させる。
② 知識、スキル及び労働者のキャパシティを改善する。
③ 関連する法的諸枠組みを強化・整合化する。
④ アスベスト関連諸法の遵守を支援・執行する。
⑤ インセンティブを確信するとともに、行動に刺激を与える。
⑥ 方針・慣行に情報を提供する調査・データ収集を実施する。

【優先課題7】東南アジアにおける能力構築

●なぜ優先課題なのか?

東南アジアの近隣諸国では、大量のクリソタイルアスベスト消費が続いており、きわめて不十分な安全衛生基準と結びついていることが多い。これらの諸国が、ARDsを発見する能力を開発し、アスベスト曝露を防止する慣行を改善するのを支援することは、アスベスト禁止を進展させる基礎を構築するとともに、インド太平洋地域についてのオーストラリアの国際開発プログラムに沿うものである。

●成功はどのようなものか?

東南アジアにおけるアスベスト消費の減少。

●行動

〇東南アジア・太平洋諸国(対象諸国)における啓発資料の作成と啓発活動を支援する。
D:①/L:ASSEA/P:非政府団体

〇アスベストリスク管理と除去のためのベストプラクティス・アプローチを共有する。以下に関する訓練と能力構築プログラムを開発する。

  • 疾病の発見
  • アスベスト曝露の防止と監視

D:②/L:ASSEA/P:非政府団体

〇以下のための技術的解決策を共有する。

  • ACM確認、管理、除去及び処理の改善

D:⑤/L:ASSEA/P:非政府団体

〇以下を支援するための調査研究を共有する。

  • 疾病の発見
  • アスベスト曝露の防止と監視

D:⑥/L:ASSEA/P:非政府団体

〇対象諸国におけるアスベスト関連疾患の負荷を確認するための調査を委託する。
D:⑥/L:ASSEA/P:非政府団体

【優先課題8】アスベスト禁止に関するオーストラリア政府の立場の推進

●なぜ優先課題なのか?

オーストラリアの過去のアスベスト使用は壊滅的な遺産を残している。さらなる死亡と疾病を防止するためにアスベストとACMsの製造と貿易を禁止するキャンペーンを支援するためにわれわれの経験をポジティブな方法で活用することは重要である。

●成功はどのようなものか?

オーストラリアの影響力がより多くの国がアスベスト禁止を実施することにつながる。

●行動

〇輸入/輸出と職場での使用禁止を含む、対象諸国における規制改革のためのモデルを開発する。
D:③/L:ASSEA/P:非政府団体

〇(ロッテルダム条約、化学物質に関するグローバル・フレームワーク、世界保健機関(WHO)及び国際労働機関(ILO)など)多国間の貿易、保健、経済及び環境協定の改革を推進する。
D:③/L:オーストラリア政府/P:非政府団体

【優先課題9】アスベスト含有製品の違法輸入に対する効果的な防止・対応

●なぜ優先課題なのか?

アスベストとACMsの製造と貿易に対して世界的禁止が達成されるまでは、アスベスト製品がオーストラリアに不法に入ってくるリスクがある。オーストラリア国境警備隊は、国境における輸入禁止の執行に責任を負っており、オーストラリアに入った輸入を追跡するとともに、是正を発動するために、WHS規制当局やオーストラリア競争・消費者委員会と協力している。

●成功はどのようなものか?

みつかった輸入事故がすべて規制措置の対象となり、輸入の再発を防止する。

●行動

〇ACMsがオーストラリアに入ってくるのを防止し続けるために、輸入サプライチェーンのためのリソースを開発する。
D:②/L:オーストラリア政府/P:非政府団体

〇 ・ 輸入/輸出許可の効果的な監督を確保する。
・ アスベスト関連処方の遵守を促進する。
・ 遵守違反に対する罰則について啓発するとともに、成功した執行結果を公表する。
D:④/L:オーストラリア政府

パフォーマンスの測定

目的:オーストラリアにおけるアスベスト関連疾患(ARDs)を根絶する。

●パフォーマンス測定:意識

  • 対象グループにおける意識のレベル
  • 国家啓発キャンペーンのベンチマークに対するパフォーマンス

●国家目標

  • 意識レベルが2024年のベースラインと比較して年々向上する。
  • キャンペーンが政府のパフォーマンス・ベンチマークを超える。

●パフォーマンス測定:労働者の能力

  • アスベスト関連訓練を終了した労働者
  • 認可及び/または認証を受けたアスベスト専門家

●国家目標

  • アスベスト関連訓練を終了した労働者の数が年々増加する。
  • アスベスト作業を行うための認可及び/または認証を受けたアスベスト専門家の数が年々増加する。

目的:アスベスト関連疾患に罹患する労働者その他の者を支援する。

●パフォーマンス測定:アスベスト除去率

●国家目標:アスベスト・ストックが、社会経済的評価4に含まれる追加率(年0.6~1.0%増)にしたがって、10年あたり10%という2021年推定値2よりも減少する。

目的:アスベスト関連疾患に罹患する労働者その他の者を支援する。

●パフォーマンス測定:中皮腫と肺がんの研究とプラグラムに対する資金提供

●国家目標:資金提供が、2020年にキャンサー・オーストラリアによって報告された3,090万ドルから増加する。

●パフォーマンス測定:アドボカシーと支援グループに対する資金提供

●国家目標:資金提供が、諸グループの2022-2023年度会計報告で報告された額から増加する。

目的:国際的リーダーシップ

●パフォーマンス測定:東南アジアにおけるアスベスト消費

●国家目標:消費が、2022年における175,000トンのベースラインから、2030年までに50%減少する。

●パフォーマンス測定:アスベストを含有する輸入製品の発見

●国家目標:輸入の再発を防止することを目的に、発見された輸入事故がすべて規制措置の対象となる。

参考文献

  1. 保健指標評価研究所「2019年世界疾病負荷(GBD2019)」
  2. Brown B、Hollins I、Pickin J、Donovan S Donovan(2023年)「オーストラリアにおけるアスベストのストック・フロー遺産」[2023年6月号参照]
  3. アスベスト安全・根絶機関(ASEA)(2022年)「アスベストの事実と数字を伝えるガイド」
  4. アスベスト安全・根絶機関(ASEA)(2023年)「アスベスト管理の経済的評価と除去の選択肢報告書」
  5. Quezada G、Devaraj D、McLaughlin J、Hanson R(2018年)「アスベスト安全未来報告書:デジタル時代におけるオーストラリアのアスベスト遺産のリスク管理と機会の取り込み」
  6. アスベスト安全・根絶機関(ASEA)(2023年)「2021-2022年度アスベスト国家戦略計画進捗報告書」
  7. Mahoney K、Driscoll T、Collins J、Ross J(2023年)「オーストラリアにおけるアスベスト関連疾患の過去、現在及び未来:データはわれわれに何を物語っているか?」

https://www.asbestossafety.gov.au/sites/default/files/documents/2024-03/Phase%20Three%20Asbestos%20National%20Strategic%20Plan%202024-2030%20-%20January%202024_0.PDF

2024年6月25日現在、ASSEAウエブサイト上で「諸政府による承認待ち」と表示されている。

安全センター情報関連情報

安全センター情報2024年8月号