欧州労使団体ー労働に関連した第三者暴力・ハラスメントに対処するための多部門ガイドラインの改定等に関する交渉開始,2024年3月19日 欧州公務労連(EPSU)

前例のない数の欧州の部門別の労働組合及び使用者が、欧州委員会の支援の下、2024年3月19日火曜日、労働における第三者暴力・ハラスメントに関する交渉を開始した。

交渉には、医療・病院、地方・地域・中央政府(刑務所を含む)、教育、レストラン、電気通信(使用者のみ)に責任を有する合計10の社会的パートナーが参加している。これらの部門における労働は通常、非社会的労働時間、夜間労働、対人、及び医療・刑務所の場合は社会的弱者への対応を伴っている。
この交渉は、労働における第三者暴力・ハラスメント(TPVH)の報告が増えていることに対応するものである。最近のEurofoundのデータによると、EUの労働者の12.5%が労働において何らかの否定的な社会的行動を経験しており、男性よりも女性の方が被害を受けている。ジェンダーギャップは、望まない性的な注目を浴びることに関してとくに顕著であり、女性が望まない性的な注目を浴びる可能性は男性の3.6倍である。若い女性(18~34歳)にとって状況はさらに深刻で、望まない性的注目を受けたという報告は、同年齢の男性の3倍、男性の最高齢層(50歳以上)の10倍も高い。

医療、消防士、警察官、刑務官、警備員などは、EU平均よりも2〜3倍高いいじめ、ハラスメント、暴力を受けている。このような労働者は、バーンアウト[燃え尽き症候群]、不安障害やうつを経験する可能性が高い。

医療部門では、Eurofoundによると、EUの医療従事者の23%が「過去12か月の労働中に少なくともひとつの否定的な社会的行動を経験」している。オランダで実施された世論調査によると、2023年には医療従事者の50%以上が、少なくとも毎月ひとつの何らかの攻撃的な言動に直面していた。その内容は、悪態や怒鳴り声から、唾を吐かれたり、殺害予告や身体的暴力に及んでいた。メンタルヘルス部門では、この数字はさらに高く、回答者の67%が2023年に攻撃された経験があり、例年よりも多かった。

交渉の焦点は、ほとんどの交渉参加社会パートナーが署名した2010年の第三者暴力・ハラスメントに関するガイドラインの改定になろう。このガイドラインは、2007 年に合意された暴力・ハラスメントに関する部門横断的合意を補完するものである。それから10年以上が経過し、虐待の拡大と問題のジェンダー的側面の認識に直面し ているなかで、ガイドラインは労働者、経営者、社会パートナーにとってより適切で、国レベ ルでより効果的なものになるよう、更新が必要である。

EUが資金を提供した2年間の調査・討論プロジェクトに基づき、前進を阻む重要な障害のひとつは、TPVHを仕事の一部と考える人があまりに多いことと、管理職からの支援があまりに少ないことである。このような状況において、労働条件、人員レベル、ジェンダー不平等、過小評価されている仕事、公共サービスの質と利用可能性が、TPVHの率の上昇を理解し、それに対応するためにきわめて重要である。

更新には以下の領域が含まれる。

  • 家庭内暴力含むILO第190号条約に沿ったジェンダーに基づく暴力
  • デジタル化とサイバー暴力
  • 人員レベルと仕事量を含む安全衛生リスクアセスメント
  • 支援、制裁、補償、救済

不安定性、人種差別、性差別、同性愛嫌悪の交差点でしばしば起こる暴力の多面的な性質は、横断的な問題となるだろう。

交渉の最新情報については、社会パートナーの合同TPVHウェブサイトをフォローされたい。

https://www.thirdpartyviolence.com/

さらなる情報

  • 交渉社会パートナーは、労働組合側ではEPSU(欧州公務労連:中央政府、地方・地域政府、 医療・病院)、ETUCE(欧州労働組合教育委員会:教育)、EFFAT(欧州食品・農業・観光関係労働組合連合会:食品・農業)、CESI(欧州独立労働組合連合会:中央政府)、使用者側では HOSPEEM(欧州病院医療事業者協会:医療・病院)、CEMR(欧州地方自治体協議会:地方・地域政府)、EUPAE(欧州行政使用者:中央政府)、HOTREC(欧州ホテル・外食産業協会:ホレカ)、ETNO(欧州電気通信事業者協会:電気通信)である。公共都市交通のETF(欧州交通労働者連盟)とUITP(国際公共交通連盟)は当初、オブザーバーとして参加する。
  • この交渉は、労働における第三者暴力・ハラスメントの防止における社会パートナーの役割に関する2年間のEUが資金提供したプロジェクト(2021~2023)を受けたものである。このプロジェクトは、調査、会合、大規模会議で構成され、2022年11月に2010年ガイドラインの更新を約束するフォローアップ行動計画を採択した。
  • プロジェクト調査から得られた証拠から、TPVHの影響と原因に対する認識が高まっていることと、とくにCOVID-19パンデミック中にとりわけ病院、教育、都市交通、刑務所のサービスにおいて、TPVHのレベルと深刻度が増加していることが明らかになった。
  • 多部門ガイドラインは、第三者暴力・ハラスメント(TPVH)を、職場、公共空間、または労働に関連した私的環境(例えばテレワーク)で起こる暴力及びハラスメントと定義している。
  • TPVHには、身体的、心理的、言語的、性的な暴力が含まれる。これらは、個人または集団による単発的な事件である場合もあれば、より組織的な行動パターンである場合もあり、無礼なケースからより深刻な脅迫、性的暴力、身体的暴行、サイバーハラスメントに至るまで様々である。
  • ガイドラインは、全体的に国レベルでの実施は不十分であったが、更新され、より効果的なものとなるに値する重要なツールであることに変わりはない。

https://www.epsu.org/article/social-partners-take-action-against-third-party-violence-and-harassment-work

安全センター情報2024年6月号