週59.5時間働いた警備員の失明・・・裁判所「過労による労災」

2021年1月5日、ソウル市内のあるマンション団地で分別収集中の警備員の様子。/聯合ニュース

24時間の交代勤務をして、休息や睡眠もキチンと保障されなかった警備員の失明は「過労による労災」であると認める判決が出た。この間、脳心血管系の疾患でなければ過労による労災をほとんど認めなかった勤労福祉公団の慣行に、再びブレーキをかけた判決だという評価されている。過労労災は疾病の種類ではなく、実質的な業務環境をベースに判断しなければならないという意味だ。

判決文と弁護人の説明を総合すると、ソウル高等裁判所が、マンション警備の業務を始めてから五ヵ月後に『両側視神経病症』の診断を受けて失明したAさんに対して、先月24日に療養不承認処分を行った勤労福祉公団に、これを取り消すよう判決した。Aさんの失明は過労・ストレスなどで発生した業務上災害で、療養給付を支給すべきだとした一審判決を維持したのだ。

Aさんは、2017年10月25日にアパート警備員の業務を始めた後の2018年3月20日に、仕事をしていて左目がほとんど見えず、右目もぼやける症状を起こした。二日後、視神経病症の診断を受け、結局両目とも失明した。Aさんは翌年、勤労福祉公団に療養給付を申請したが、公団はAさんの環境的な要因や過労、ストレスが原因とは見難いとし、療養給付不承認の処分を行った。

裁判所は、Aさんの失明に過労とストレスが影響を与えたと見た。Aさんは明け方6時から翌日の明け方6時まで、24時間の隔日制勤務をし、一週間に平均59.5時間働いた。勤務中の睡眠時間として5時間(夜12時~夜明け5時)が与えられたが、警備室の簡易ベッドで電灯を点けて寝たうえに、宅配や苦情などでまともに眠ることができなかった。異常な降雪に見まわれた日も、Aさんは午前2時から午前6時まで除雪作業をした。

裁判所は、Aさんの勤労契約が「住民たちの苦情が三回以上出され、改善の余地がないと判断される場合」を契約解約の理由として挙げていることも、ストレスと過労に影響を与えたと見た。Aさんは警備日誌に繰り返し「住民に親切にして、不必要な言葉(言い訳)を言わないように」「住民を説得するな」などの約束事を書いた。

事件を担当したイ・ジェウォン弁護士は「(今回の判決は)疾病の形式的な面だけを見たのではなく、実質的に過労と傷病の因果関係を認めたもの」で、「特に、休憩施設が別になく、苦情を扱う時の心理的な圧迫などの勤労環境を綿密に反映した」と話した。「労災補償保険法施行令」は、過労を脳心血管系疾患との関連でのみ、眼科疾患は化学物質ばく露との関連でのみ、規定している。形式的な要件だけを適用する限り、Aさんの眼科疾患のような脳心血管系疾患でない場合には、ストレス状況や長時間勤労などに過労労災が認められるのは、容易ではないわけだ。

公団が裁判所の判断通り、過労労災を実質的な業務環境を基準として認めるべきだという声が出ている背景だ。パク・ダヘ弁護士は「施行令に示された要因だけを制限的に見なくても良いという過労労災の判断基準を再確認した判決」で、「当初に公団がきちんと判断をしていれば、被災者にも長い訴訟時間という不利な状況が発生しなかっただろう」と話した。

2024年2月26日 ハンギョレ新聞 チャン・ヒョンウン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1129776.html